私的 児童文学作家事典〔海外編〕 [ア行(a)] [カ行(k)] [サ行(s)] [タ行(t)] [ナ行(n)] [ハ行(h)] [マ行(m)] [ヤ行(y)] [ラ行(r)] [ワ行(w)]
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「裏」私的 児童文学作家事典〔海外編〕

 読んだ作品と、その感想ほか。作品の後ろの数字は読んだ年(「76以前」が小学校時代、「86」以降は社会人になってから。記載なしは不明)。記述の長短は作品の評価とは無関係である。作品の内容にふれていてネタばらしになっているところもあるので、未読の方は要注意。よく覚えていなくて、あまりコメントすべき点が思いつかないものもある。
 なお「読んだ作品」には「表」にある児童文学以外の著作も含まれている。

2020年11月26日 鈴木朝子

ア行

アウル,ジーン
『大地の子エイラ』:84『恋をするエイラ』:85『狩をするエイラ』:87『大陸をかけるエイラ』:99
 石器時代の「おしん」から石器時代のハーレクィンへ。道具や生活の描写が見てきたように細かくとても興味深い(多分に想像が入っているにしても)。ただ、妊娠についての考え方がネアンデルタール人とクロマニヨン人でほとんど同じところなど、少し御都合主義なところもある。大河ロマンスとして、長いが読みやすい。
アスビョルンセン,ペテル・クリステン
『太陽の東 月の西』:84
 タイトルがきれいで好き。表題作は「エロスとプシュケ」のスウェーデンバージョン。
アダムズ,リチャード
『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』:83
 基本的には食べ物とメスのことしか考えていなくて、「シルフレイ」などのあくまでうさぎとしての行動がおもしろい。人間の機械を「フルドド」などという語感も良い。
アドラー,キャロル・S.
『銀の馬車』:83
 ファンタジーの部分もあるが、基本的にはリアリズムの話。こういう現代の問題を扱う作家・作品は「寿命」が短いだろうな…と思うとちょっと残念(どんな作品も遅かれ早かれ時代遅れになって、新しい作品にとって代わられるものだけれど)。
アトリー,アリスン
『時の旅人』:82
 タイム・ファンタジーとして『トムは真夜中の庭で』に先立つこと19年。悲恋物語だがよくできていて好き。単なる過去の傍観者ではなく、生命の危険にさらされるところで人とのつながりを感じさせる。イギリスの古い屋敷ってこういうことあるんじゃないかなあと思わせる話の一つ。
アーノルド,エリオット
『白いタカ』:83
 歴史物語は好きだったので。
アーモンド,デイヴィッド
『肩胛骨は翼のなごり』:04
 引越したばかりの上、生まれたばかりの妹が病気という落ち着かない状況の中、少年が倒れそうなガレージで見つけた「彼」は…という話だが、結局「彼」が何者なのか、なぜそこにいたのかは明らかにされない。「彼」の状態も食べるものも決して「美しく」はなく、「きれい」なお話を想像していると戸惑うかもしれないが、それでも確かに不思議な透明感のある「美しさ」を感じられる小品。学校に行っていない隣家の少女など、社会的な問題もちらりと見せるが、基本的には微妙な味わいのファンタジーと言える。
アラン,メイベル・エスター
『緑の指の見えた日』:82
 自伝的な話だが、若いうちに視力を回復し、理解あるボーイフレンドまでできるという、著者にとってせめてこうあって欲しかったという思いがこめられた話なのだろう。自分本位だが快気祝いにタイプライターを買ってくれる父親がよく書けているし、頑固なところが主人公と似ている。
アリグザンダー,ロイド
『タランと角の王』:83『タランと黒い魔法の釜』:83『タランとリールの城』:83『旅人タラン』:83『タラン・新しき王者』:83『コルと白ぶた』:83『フルダー・フラムとまことのたてごと』:83
 結構味のある人物があっさり死んでしまったりするドライなところや、結局タランの生まれはわからなくて生まれは重要ではないこと、逆に持って生まれた力を捨てて普通の人間として生きることが選択できるところなど、いかにもアメリカらしいと感じられる。ただ、もっと子どものうちに読めばもっと楽しめたと思えて残念。
アンデルセン(アナセン),ハンス・クリスチャン
 きちんとした完訳で読んだことはないかもしれない。何となく辛気臭い気がしてあまり良い印象が持てない。
イーザウ,ラルフ
『ヨナタンと伝説の杖』:06『第七代裁き司の謎』:06『裁き司 最後の戦い』:06
 これも「田舎に住んでいた普通の少年がある日運命の旅に出て、いろいろな体験を経て成長して、実は…」というよくあるタイプの別世界ファンタジー。1巻と2巻が一続きの話でそれぞれの巻もかなり長いが、長い割にはさくさく読める。3巻の話もそれなりに重要な話で物語としても悪くはないのだが、処女作のためもあるのか三部作としては少々全体のバランスが悪い。こちらの世界のことについては、特におじいさんにとってはあれでいいのか?と少し不満が残る。そう言えばドイツの作家なのになぜイギリス人? 内容は全く異なるが、プルマンの<ライラの冒険>シリーズと同じくキリスト教的思想が色濃く出ていることには何か同時代的な理由があるのだろうか? 全体としては安心して読めるおもしろさのある作品。
イソップ(アイソーポス)
 岩波少年文庫版は原形に近く一つ一つの話が短く必ず教訓がついているが、今子どもが読むのならかえってもう少し長めに再話したものの方がいいかも知れない。イギリスにセミはいないので、「セミとアリ」が「アリとキリギリス」になっているのが有名で、日本に英語版で入ったことを思わせる。
ウィーダ
『フランダースの犬』:76以前
 昔家にあったのがどの版か忘れた。単なるお涙ちょうだいもののような気がしていたが、読み返してみたら結構鋭い風刺文学なんだなあと思った。古いので地の文が説明過多で回りくどいのはしかたないが。
ウィリアムズ,アーシュラ・モレイ
『木馬の冒険』(三鷹書房):88
 福音館版の中川宗弥の絵は、原書のパフィン版のペギー・フォートナムの挿絵(2003年の福音館文庫版に採用)に似せたもののようだが、どちらも戦前の三鷹書房版にあった木馬の表情が生き生きとしていたジョイス・ブリスレイという人の挿絵には及ばない。1991年に出た女子パウロ会の版の挿絵もかわいすぎてあまり良くない。
ウェストール,ロバート
『“機関銃要塞”の少年たち』:96
 空襲の戦時下でも砲弾の破片の収集を自慢しあうような子どもたちの世界がとても良く書けている。結末のつけ方もうまい。
ウェブスター,ジーン
『あしながおじさん』(新潮文庫):85『続・あしながおじさん』(新潮文庫):87
 小学生の頃読みかけて中断。手紙形式というのは既に起こってしまったことを記述しているので、臨場感がなくてつまらないと思っていたが、のちに再挑戦したときにはそんなことは全然気にならず大変おもしろく読めた。
ヴェルヌ(ベルヌ),ジュール
『十五少年漂流記』:76以前『二年間の休暇』:82以前『海底二万リーグ』(ハヤカワSFシリーズ):98
 かなり短い抄訳で最初に読んで、次にもう少し長めの(多分)抄訳で読んで、それから完訳を読んだが、どれもとてもおもしろく読めた。器用で道具を作るのがうまいバクスターという少年を覚えている。
 『海底二万リーグ』はSF古典の一つなので読んでみた。古さは免れないものの、想像上の光景であるはずの海底の状景が生き生きと描かれているのが楽しく、今読んでもそれなりに魅力の感じられる作品。
ヴェルフェル,ウルズラ
『灰色の畑と緑の畑』:96『火のくつと風のサンダル』:88
 『火のくつと風のサンダル』はタイトルが気に入って読んだ。『灰色の畑と緑の畑』は世界各地でのシビアな現実を描いているが、「よそのこどもたち」「灰色の畑と緑の畑」のように最後に解決の見える話もあり、そうでない話についても「しかし変えることができる」(著者の前書き)として考えさせる意欲作である。
ヴォイチェホフスカ,マヤ(ヴジェコフスカ,マイア)
『夜が明けるまで』:86
 淡々とした戦争ものなのでちょっとしんどいかも。
ウォルシュ,ジル・ペイトン
『夏の終わりに』:82以前
 思春期の少女の青春小説。表紙がきれいだった。
エイケン(エイキン),ジョーン
『ウィロビー・チェイスのおおかみ』:82『バターシー城の悪者たち』:82『ナンタケットの夜鳥』:82『かっこうの木』:82『ささやき山の秘密』:82『しずくの首飾り』:81以前『海の王国』:82『かってなカラスおおてがら』:82『暗闇に浮かぶ顔』:82『子どもの本の書きかた』:86
 歴史ファンタジーものは一作ごとに主人公が変わるのが目先が変わって良かったが、途中から変わらなくなってちょっと残念。特にそのダイドーの性格があまり好きでなかったので(もっとも主人公になったら性格が良くなったようだったが)。現代の妖精物語『しずくの首飾り』は挿絵とともにイメージがとても美しくて好き。ミステリーの『暗闇に浮かぶ顔』もおもしろかった。
エスティス,エレナー(エステス,エリナー/エスティーズ,エリノア)
『元気なモファットきょうだい』:96『百まいのきもの』:96
 『元気なモファットきょうだい』は古さをあまり感じずに楽しめる元気な話だが、『百まいのきもの』はいじめ問題を考えさせる少し暗い話。
エッカート,アラン・W.
『アナグマと暮らした少年』:96『みどりのトンネルの秘密』:88
 博物学の知識が豊富な書きなれたジャーナリスト出身らしく『アナグマと暮らした少年』は読みやすくおもしろいが、創作ファンタジー『みどりのトンネルの秘密』はあまり出来が良くない(ナルニアに対する思い入れはわかるが…)。基本的にノンフィクションの人だと思う。
エルショーフ,ピョートル
『せむしの小馬』
 多分もとの詩の形でなく物語として再話されたのを読んだと思う。しかし王女様は父親があんな風に死んでしまっていいんだろうか?(民話だからいいのか…)
エンデ,ミヒャエル
『モモ』:80『はてしない物語』:82
 『モモ』は説教臭いことは臭いけど、テーマが一つなのでわかりやすく、わりと好きだったりする。『はてしない物語』の方がアイデアをつめこみ過ぎで、消化不良な感じがした。「それはまた別の物語…」が知りたくなる。
エンライト,エリザベス
『ひかりの国のタッシンダ』:00『ゆびぬきの夏』:00
 『ひかりの国のタッシンダ』はイメージがとても美しくて気に入ったが、子どものころに読んでいたら忘れがたい一冊になったろうにととても残念。もっと長ければいいのになあ。『ゆびぬきの夏』は素朴な生活や少女の心理がよくわかるほのぼのとした小品。
オセーエワ,ワレンチナ・アレクサンドロヴナ
『ワショークと仲間たち』:86
 いかにもソ連らしい健全な少年少女の物語で安心して読める。読み終わった当時、続編がすごく読みたかった。
オデール,スコット
『青いイルカの島』:86『黄金の七つの都市』:84『黒い真珠』:85
 『青いイルカの島』の挿絵は動物や風景は絵なのに、人物のあるシーンに映画のスチル写真が使ってあり、あまりセンスが良くない。『黄金の七つの都市』をもとにしたアニメは原作とは違う話になっていたようだった。
オルコット,ルイザ・メイ
『四人の姉妹』:82以前
 ある程度大きくなってから読んだので、細かいところにあまり思い入れはない。でもおもしろかったけどね。
オールドリッジ,ジェイムズ
『ある小馬裁判の記』:82以前『タチ』:84
 『ある小馬裁判の記』は法の下の平等などを扱う興味深い話。『タチ』は『あしながおじさん』と並ぶ手紙文小説の傑作だと思う。馬についての手紙のやり取りなんて全然おもしろそうじゃないが、これが実におもしろいのだ。

カ行

ガスター,モーゼス
『りこうなおきさき』:80以前
 表題作の「~するでもなく、しないでもなく」というくだりがおもしろかった。
カーター,ピーター
『果てしなき戦い』:85『黒いランプ』:85
 『果てしなき戦い』は大変重く厳しい話で読むのに少々疲れたが、読みごたえがあり印象深かった。法政大学の児童文学のシンポジウムで見た作者は、静かな大柄な人という感じだった。
ガーナー,アラン
『ブリジンガメンの魔法の宝石』:82『ゴムラスの月』:82『エリダー』:82『ふくろう模様の皿』:82
 どれもよくできたファンタジーだが、不要なところがぎりぎりまで削ぎ落とされている感じで、もう少し説明や余韻が欲しいところもあった。『ふくろう模様の皿』は最初に読んだときはよくわからなかったが、二回目に読んだときはよくわかった。お皿の「花」の絵はきれいだったな…。どれかというなら最初の2作が好き。
カニグズバーグ,E.L.
『クローディアの秘密』:80以前『魔女ジェニファとわたし』:80以前『ロールパン・チームの作戦』:86『ジョコンダ夫人の肖像』:84
 何と言っても、『クローディアの秘密』の博物館への家出というアイディアがすばらしい。『ロールパン・チームの作戦』のおかあさんもいい。歴史物語の『ジョコンダ夫人の肖像』もおもしろかったが、基本的には現代ものの人。話がうまく、安心して読める。
ガーネット,イーヴ
『ふくろ小路一番地』:84
 「上から見た下層階級の話に過ぎない」という批判もあるが、よくできた楽しい物語だと思う。
ガネット,ルース・スタイルス
『エルマーのぼうけん』:76以前『エルマーとりゅう』:76以前『エルマーと16ぴきのりゅう』:76以前
 持って行ったものをきちんと使うところや、色彩豊かな生き物や風景がいい。ストーリーも明快でとても楽しく、大好きな話の一つ。アニメは今一つとか…?
ガーフィールド,レオン
『ねらわれたスミス』:86『金色の影』:81?
 『ねらわれたスミス』は歴史物語としておもしろく読んだと思う。『金色の影』は生き生きしたギリシア神話を色あせたつまらない話に再話したようで、あまりいただけなかった。この人も法政大学の児童文学のシンポジウムで見たが、温厚なイギリス紳士という感じだった。
キプリング,ラディヤード(キップリング,ラドヤード)
『ジャングル・ブック』:97
 ディズニー・アニメの印象が強かったが、原作は結構淡々とした風刺的な話。一貫した筋がなく、エピソードの連続でできているため話の中の時間も多少前後したりするので、子どもの読者には少しわかりにくいかも。
ギャリコ(ガリコ),ポール
『さすらいのジェニー』:85『トマシーナ』:85『ほんものの魔法使』:85『雪のひとひら』:86
 『さすらいのジェニー』は本当は子ども向けの物語じゃないかもしれないが、よくできた動物ファンタジーだと思う。猫の気持ちがわかるような気にさせてくれる。『雪のひとひら』は女性向けのロマンチックな小品。いろいろな作品の書ける人だと思う。
キャロル,ルイス
『ふしぎの国のアリス』『鏡の国のアリス』:80以前
 これも、特に『ふしぎの国のアリス』の方はディズニーのアニメでしか見たことがないかもしれない。今はもう子どもの読みものじゃないのかも。
キング=スミス,ディック
『子ブタ シープピッグ』:96
 ベイブもかわいいが、何と言っても無口なホギットさんと、おしゃべりなおくさんとのかけあいが楽しい。映画はどうだったのかな…?
グージ,エリザベス
『まぼろしの白馬』:89
 古いイギリスの味わいのある話の一つ。
クーパー,スーザン
『コーンウォールの聖杯』:82『光の六つのしるし』:82『みどりの妖婆』:82『灰色の王』:82『樹上の銀』:82
 いろいろな伝説が使われていて、謎や伏線も多くとても読みごたえがあって良かった。最後の所だけはちょっといただけないが。ところで「老婦人」の原形って何?
クラーク,ポーリン
『魔神と木の兵隊』:86『少年警官ジェイムズくん』:97
 『魔神と木の兵隊』はイギリスならではの味わいのあるファンタジー。読んだ後旅行でブロンテ家の牧師館にも行ったけど、その前に読んでおけば良かったな。
クリアリー,ベバリイ
『がんばれヘンリーくん』:76以前『ヘンリーくんとアバラー』:76以前『ヘンリーくんとビーザス』:76以前『ビーザスといたずらラモーナ』:76以前『ヘンリーくんと新聞配達』:76以前『ヘンリーくんと秘密クラブ』:76以前『アバラーのぼうけん』:76以前『ラモーナは豆台風』:76以前
 <ヘンリーくんシリーズ>は今はもうひと昔前の話になってしまったそうだが、当時はそれなりにおもしろく読めた。ただ自分が大きくなっていたためか、ラモーナには共感できなかった。この人も現代もののうまい人。
クーリッジ,スーザン
『ケティ物語』
 昔何かの付録で抄訳を読んだが、割とおもしろかった記憶がある。消えゆく少女小説の一つだろうが。
グリーペ,マリア
『忘れ川をこえた子どもたち』:82以前『鳴りひびく鐘の時代に』:85
 どちらも暗く静かな美しさのあるしみじみとした話。
グリム,ヤーコプ/グリム,ヴィルヘルム
 ちゃんとした完訳で読んだことは多分ない。成人後も経歴がほとんど同じ兄弟って珍しいよね。
グリーン,ロジャー・ランスリン
『アーサー王物語』:82
 概要を知るにはお手軽な入門書で、手早くアーサー王のことを知りたい人にお勧め。
グレアム,ケネス
『たのしい川べ』:83
 地味な話でよく残っているものだと思うが、イギリス人はこういうのが好きなのかも。後半のヒキガエルの話は、前半の話とちょっと毛色が違うような感じがした。
クレスウェル,ヘレン
『拝啓、心の先生』:86『海からきた白い馬』:87『幽霊の友だちをすくえ』:97
 どれもそれなりにおもしろいのだが、もう一歩という感じがする。『海からきた白い馬』については、どこかに「イギリスの山下明生(『海のしろうま』の作者)」と書いてあったっけ。
クローバー,シオドーラ
『イシ-二つの世界を生きたインディアンの物語』:81?
 もとは学術的な著作だったようだが、物語としてのこの話はよくできていておもしろい。この物語、というよりこの物語のもとになったヤヒ族のことはかなり有名らしく、アーロン・エルキンズのミステリ『暗い森』にも出てきたっけ。ル=グウィンのお母さんとは読んだときは気づかなかったような。
ケストナー,エーリヒ
『エーミールと探偵たち』:80以前『エーミールと三人のふたご』:80以前『点子ちゃんとアントン』:85『飛ぶ教室』:83『五月三十五日』:82『ふたりのロッテ』:80以前『わたしが子どもだったころ』:87『子どもと子どもの本のために』:87『消え失せた密画』:89
 『ふたりのロッテ』をお芝居か何かで見たのが最初かも。『エーミールと探偵たち』もおもしろかったが、基本的にケストナーは私にとってきちんと出会い損なった作家だった。『飛ぶ教室』はいい話だと思ったけど、中高生のうちに読みたかった。『わたしが子どもだったころ』で開眼して伝記まで読んだが、ケストナーって結構変わり者だったんだね。
ケラハー,ヴィクター
『魔道師の杖』:90
 そこそこ楽しめる普通のファンタジー。
ケンダル,キャロル
『かがやく剣の秘密』:90
 一見軽そうだが、結構味のあるファンタジー。
呉 承恩(ゴ,ショウオン)
『西遊記』
 昔家にあった抄訳かリライトもので読んだと思う。作者不祥の伝説扱いになってることも多いせいか、事典類に作者が載ってないことがあった。
ゴッデン,ルーマー
『人形の家』:81以前『ディダコイ』:81?『台所のマリアさま』:81以前『ねずみ女房』:81?『ホリーとアイビーの物語』:82
 色合いがきれいな『台所のマリアさま』が好き。主人公の少年の書き方を始め、物語としてもとてもよくできていて良い。『人形の家』では一番好きだったことりさんのことがちょっと悲しかった。『ねずみ女房』は不倫の話っていう解釈もあるとか。
コッローディ(コルローディ),カルロ
『ピノッキオの冒険』
 絵本とかでしか読んでないかもしれない。これは(幸い)絶版にならないんだね。
コルシュノウ(コルシュノフ),イリーナ
『ゼバスチアンからの電話』:91
 性体験もさらっと書いていて、日本の話ならこうはいかないだろうなあと思った。思春期の少女の物語であるとともに、自立する妻の物語でもある。
コールス,ダイアナ
『アリーテ姫の冒険』:95
 待ってるだけじゃない賢いお姫様の物語ってことになってるけど、その賢さがうまく表現できていないと思う。志は買うとしても、基本的な小説作法が下手。これをほめてる人ってろくな本を読んでないかわいそうな人なんだろうなあ…。
ゴレモス,アレキ
『金のゆりのひみつ』:82以前
 珍しいギリシアの児童文学。

サ行

サウスオール,アイバン
『燃えるアッシュ・ロード』(偕成社文庫):83
 乾燥したオーストラリアでの火事の恐ろしさがよくわかる作品。ただ、自分の責任を認めるのはいいのだが、あの被害に対する損害賠償はどうするのかが心配になってしまう。
サトクリフ,ローズマリ
『太陽の戦士』:83『王のしるし』:83『第九軍団のワシ』:83『銀の枝』:95『ともしびをかかげて』:83『運命の騎士』:83『辺境のオオカミ』:02『ケルトの白馬』:02『ケルトとローマの息子』:02『はるかスコットランドの丘を越えて』:02『小犬のピピン』:02『思い出の青い丘』:85
 大変読みごたえのある歴史物語の傑作群。個人的にはハッピーエンド(?)に終わる『太陽の戦士』『第九軍団のワシ』が好きだが、『ともしびをかかげて』がやはり一番良くできていると思う。『銀の枝』は本が出る前に英語で読んだが、クライマックスになると文法が破調になるのでよくわからないところがあったし、英語で読むのは私にとっては曇ったガラス越しに見ているような感じでもどかしかった。『辺境のオオカミ』、マーカス一族の話がまた読めて嬉しかった。『王のしるし』『ケルトの白馬』の終わり方は納得できるけれどちょっと悲しい。『はるかスコットランドの丘を越えて』、この作者の比較的新しい時代のものは初めて読んだので新鮮だった。『小犬のピピン』は小品だが結構変わった味わいの話。自伝『思い出の青い丘』は少し読みにくかったのだが、おもしろい物語を書く人の自伝が時にあまりおもしろく感じられないのは不思議。
サーバー,ジェームズ
『たくさんのお月さま』:82以前
 民話のような繰り返しと、みんなの取り越し苦労がおかしいお話。今出回っているのは絵本の形式のものだけかも。もともとも絵本だったらしいが…。
ザルテン,フェーリックス
『バンビ』
 ディズニーアニメと(多分)その歌の印象が強いが、原作とはかなり違う雰囲気らしい。原作はちゃんと読んでいないと思う。
サン=テグジュペリ,アントワーヌ・ド
『星の王子さま』:76以前『夜間飛行』:86-87
 『星の王子さま』は、特に好きな作品という訳ではないが、イメージの美しい、非常に印象的な作品であると思う。「ゾウをこなしているウワバミの絵」とか 「(箱に入った)ヒツジの絵」とかは好きだけど。ドリュオンの『みどりのゆび』ほどではないが、フランスの児童文学って教訓的な感じのものが多いのだろうか? 『夜間飛行』は題に魅かれて(メアリー・スチュアートの『小さな魔法のほうき』による)読み始めたけど、読み通すのがしんどかった。
ジー,モーリス
『惑星Oの冒険』:85
 SFとも言われているが、どちらかというとファンタジーだと思う。類型的かもしれないが、別世界とその住人(人間以外の)がよくできていて、私はかなり好きな作品。あまり評判にならなかったようで、続編もあるらしいが訳されていないのは残念。
ジェイコブズ,ジョゼフ
『ジャックと豆のつる』
 この人の再話で読んだのではないかもしれない。「三びきのこぶた」などは一般に流布しているのと結構違っているらしい。「おばあさんと子ぶた」はテープになっているもので聞いて、どんどん積み重ねられていくくだりが印象に残っている。
ジェフリーズ,ロデリック
『ダン警部の24時間』:82以前
 筋とは全然関係ないが、犯人のやっているクロスワードで、南アフリカの首都がプレトリアだということを覚えた。純粋に児童もののミステリーって少ないような気がするけどそんなことないか…? 「24時間」は、読んでいるときはもっと長く感じた。
シートン,アーネスト・トムソン(トンプソン)
<シートン動物記>
 家にあった<トツパンの絵本 シートン動物記>(フレーベル館)というのでよく読んだ。楽しい話もあるが、悲しい話が多かったと思う。たくましく生きる『かしこくなったコヨーテ ティトオ』とかは好きだった。『オオカミ王ロボ』は餌に工夫するところなどをよく覚えている。
ジーハ,ボフミル
『ホンジークの旅』:84
 ずっと家にあったがなかなか読まなかった本。読み始めたらすぐ読めてしまったのだが。消えゆく共産主義文学の一つ。いい話だったんだけどね(確か)。
シャープ,マージェリー
『小さい勇士のものがたり』:76以前『ミス・ビアンカのぼうけん』:76以前『古塔のミス・ビアンカ』:76以前『地底のミス・ビアンカ』:76以前『オリエントの冒険』:04『南極の冒険』:04『さいごの冒険』:04
 地域文庫や図書館で何度も借りたとても好きな本の一つ。何度読んでもおもしろく読めた。
 読んでいなかった後半の3冊を子どもに読み聞かせるという形で読んだが、挿絵が変わっていて感じが違ってしまっている(特にバーナードが太っていない!)以外に、助けるべき「囚人」がほとんど出て来なかったり、少々荒唐無稽に感じられたり、後味が悪いところがあったりして、前半の4作に比べて心から楽しめなかったのは自分が年を取ったせいか。でもやはり最終作(番外編?)の『勇者バーナード』が訳されなかったのが残念。
シャミ,ラフィク
『蠅の乳しぼり』:04
 シリアのダマスカスで過ごした子ども時代の自伝的な作品と思われる短編集。現代の貧困の中で、しかもよくクーデターが起こり「映画館にかかっている映画よりはやく」交代してしまう政府の下でも、人は生きているのだなあという物語。貧しい生活の中の何と言うこともない日常のひとこまがあっさりと書かれているだけのようだが、現代のおとぎ話的な感じで不思議と読ませる。
ジャレル,ランダル
『陸にあがった人魚の話』:84
 大学のサークルで評論社の児童ファンタジーを調べたとき、分担で読んだもの。
シュトルツ(ストールズ),メアリ
『鏡のなかのねこ』:97
 過去の話の方の結末がなくて(悲劇になるしかないから?)、気になってしまった。もう少し最後に余裕が欲しいが、現代的なテーマの話ははっきりした結末はつけにくいか?
ジョーンズ,ダイアナ(ディアナ)・ウィン
『魔女集会通り26番地』:85『わたしが幽霊だった時』:94『魔女と暮らせば』:04『トニーノの歌う魔法』:04『クリストファーの魔法の旅』:04『魔法使いはだれだ』:04『魔法がいっぱい』:04『魔法使いハウルと火の悪魔』:07
 ちょっとひねった感じの話が多い人。『魔女集会通り26番地』は、最初姉の方が主人公かと思って思い入れをしてしまうので、ちょっと辛かった。「名前の掟」が呼ぶ方にマイナスになってしまう話。『わたしが幽霊だった時』もミステリ・タッチでおもしろかった。
 <大魔法使いクレストマンシー>シリーズとして翻訳がそろったのは喜ばしい。1作目の再読を含めて通して読んだが、1話完結なのであまり関係ないとはいえ、翻訳が原作の出版年順でも物語の中の時間順でもないのは何故だろうか? どれも中盤から一気に物語が動き出す展開になり引きつけられるが、最後に重大事が解決すると細かいことはすべて不問に付されてしまったり(『クリストファーの魔法の旅』でのクリストファーの行為など)、うまく収まりすぎだったり(『魔法使いはだれだ』のいじめ問題や家族の死など)という気もする。一部のキャラクターの扱いは読んでいて少し辛い。相変わらず一風変わったファンタジーを書く人だと思った。
 『魔法使いハウルと火の悪魔』はジブリ・アニメの方を先に観てしまった。最初の方は結構そのままっぽいと思ったが、後半は全然違う話だった。カルシファーはかわいいけど。
スウィフト,ジョナサン
『ガリヴァー旅行記』
 多分ダイジェストでしか読んでないので、後半の馬の国とかの部分はよく知らない。
スタインベック,ジョン
『赤い小馬』:82以前
 児童文学の事典には出て来ないのだが、この話は児童文学だと思う。辛気臭くてあまり好きじゃないんだけど。
スチュアート,メアリー
『小さな魔法のほうき』:81以前『狼森ののろい』:83
 『小さな魔法のほうき』はマザーグースを使った、大作ではないが味のあるいいファンタジー。『狼森ののろい』も題が悪いけど、そこそこ読ませるファンタジー。アーサー王もので有名らしいので、そっちの方も読んでみたいのだが、訳されないかなあ。
スティーブンスン,ロバート・ルイス
『宝島』:80以前
 ちゃんとした完訳で読んだんじゃないかもしれないけれど、悪人とも善人とも言えないジョン・シルバーがやはり印象的だった。
ストー(ストーア/ストール),キャサリン
『マリアンヌの夢』:81以前『海の休暇』:83『ルーシーのぼうけん』:80以前『ルーシーの家出』:80以前
 『マリアンヌの夢』は石の描写がちょっと怖いが、おもしろくて読みごたえがあった。『海の休暇』は『マリアンヌの夢』の続編だから読んだが、まったくリアリズムの話だった。そうつまらない話ではないけれど。『ルーシーのぼうけん』『ルーシーの家出』もおもしろかった。
ストックトン,フランク・リチャード
『怪じゅうが町へやってきた』:83
 グリフィンがかわいそうだったなあ…。
ストレトフィールド(ストリートフィールド/ストレットフィールド),ノエル
『バレエ・シューズ』:97
 古い話だが、ぐいぐい読ませるストーリーのうまい作家だと思った。姉妹の、特に次女のその後が気になる。
スナイダー,ジルファ・キートリー
『首のないキューピッド』:83『ビロードのへやの秘密』:97
 『首のないキューピッド』は、オカルトかと思わせるが基本的にはミステリー仕立ての普通の話であるところが、ちょっとひねっていてうまい。最後に?というところはあるが…。調査に図書館を使うところはさすが。『ビロードのへやの秘密』はうまく行き過ぎる気もしないではないが、思春期の少女の自己確認のための物語としてはまあ良い。
スピア,エリザベス・ジョージ
『からすが池の魔女』:82以前『青銅の弓』:86
 『からすが池の魔女』は(珍しく)ハッピーエンドになる魔女狩りの話でホッとした。ファンタジーっぽい題名が印象的。『青銅の弓』はもっと古い時代の歴史物語だが、よく考えて見ると両方ともキリスト教関係の話だ。作者は敬虔なクリスチャンか?
スピリ(シュピーリ),ヨハンナ
『ハイジ』(岩波少年文庫):76以前
 できすぎた「名作」ではあるけれど、結構好きだし、やはりいい話だ。ヤギのミルクやチーズが本当においしそうなところが良い。アニメは良心的に作っているとは思ったけど、絵が自分のイメージと合わなくて…。
スラビー(スラビイ),ズデニェク・カ
『たいようのぼうや』:76以前
 挿絵が印象的…と思っていたら瀬川康男で、日本とチェコの合作のようにしてできた本だということが今回わかった。
セーリン,ガンヒルド
『きょうだいトロルのぼうけん』:76以前
 食べ物や道具を工夫するところなどが好きだった。
セルデン,ジョージ
『都会にきた天才コオロギ』:88
 動物たちの元気で楽しいお話。
セレディ,ケイト
『歌う木』:85『白いシカ』:97
 『歌う木』はハードカヴァー版の表紙がきれい。話も素朴でいい話なのに、なぜ福音館では絶版なのだ?『白いシカ』はイメージの美しい民話調の話。
ソボル,ドナルド
<少年たんていブラウン>:82以前
 ひところおもしろくて結構読んだのだが、全部読んだかどうかはわからないし、個々の話はほとんど覚えていない。こういう軽く読めるシリーズものは、あまり評価されずに消えてしまうのだろうと思うとちょっと気の毒。
ソーヤー,ルース
『空をとんだおんぼろ校舎』:76以前
 自分たちの土着の伝説を持たないアメリカで、妖精を活躍させるという技を見事にやってのけた話。

タ行

タウンゼンド,ジョン・ロウ
『アーノルドのはげしい夏』:83『子どもの本の歴史』:84
 『アーノルドのはげしい夏』は暗くて一見辛気くさい話だが、主人公のアイデンティティの確認の話として説得力のある力作で結構おもしろかった。『子どもの本の歴史』は英米児童文学の研究書としておさえておくべき基本図書。
ターナー,フィリップ
『シェパートン大佐の時計』:84『ハイ・フォースの地主屋敷』:84『シー・ペリル号の冒険』:84
 地味で再読するまで内容をよく思い出せなかったが、おもしろかったことと、話の本筋とは関係ないエピソード(煙突からとびだしたブラシとか)が印象に残っていた。少年たちの「生態」が細かく書き込んであって楽しい。第4作が訳されなかったのが残念。
ダール,ロアルド(ローアル)
『チョコレート工場の秘密』:84『まほうのゆび』:82以前『おばけ桃の冒険』:15
 『チョコレート工場の秘密』は子どものうちに読めば楽しめたかも。ちょっとグロテスクな感じが今一つなじめなかった。『まほうのゆび』はもう少し前だったせいかあまり気にならなかったが、変わった話だなという印象が残っていた。
 『おばけ桃の冒険』は少年が巨大化した桃に入り込んで虫たちと旅をするというダール特有のほら話。虫やナンセンス・ファンタジーが嫌いでなければ楽しめるが、1ページ目で「お父さんとお母さんは二人とも、ロンドン動物園から逃げだした、怒り狂う大きな犀に食べられてしまったのです」には驚いた。出てくるのは、むかで、みみず、きりぎりす老人、くも嬢、てんとう虫、かいこ、つちぼたる(訳者あとがきではなぜか微妙に表記が違って、ムカデ、ミミズ、コーロギ老人、クモ嬢、テントー虫、カイコ、土ボタル)。特にメインはむかで。こういう虫を主要キャラにする発想もすごい。でもみんないい奴だよ! 雲男や虹の作り方?もおもしろい。スポンジおばさんとスパイカーおばさんは本当に死んだの?とか、あの小さな老人は何者?とか、最後は虫たちが会社で働いたり人間と結婚したりしてるけど?とか、いろいろ追及してはいけないのだろうな。ちらっと「有名なチョコレート工場」というものも出てくる。最近の<ロアルド・ダール コレクション>版では結構訳も違うんだろうな。
ダレル,ジェラルド
『小包の運んできた冒険』:84
 大学のサークルで評論社の児童ファンタジーを調べたときに読んだもの。割と読みやすく、それなりにおもしろかった。
ダンロップ,アイリーン
『まぼろしのすむ館』:91
 イギリスの味わい深い古い館ものの一つ。この手の話は好きなので嬉しい。
チャーチ,リチャード
『地下の洞穴の冒険』:80以前「ふたたび洞穴へ」:85
 結構好きだった少年探険もの。少年文庫で再刊されるまで私の中の「幻の名作」の一つだった。性格の悪い一行の一人が続編でさらに嫌な奴になっていて救いがなく、シビアでちょっと気の毒。
チャペック,カレル
『長い長いお医者さんの話』:86「RUR」:87『園芸家12カ月』:88
 『長い長いお医者さんの話』はほのぼのとしたいいお話の古典。「RUR」はSFの古典。『園芸家12カ月』は「もう二年たつが、樹齢百歳の巨木にはまだならない」というくだりなどがとても楽しい園芸マニア(?)の本。
チャント,ジョイ
『赤い月と黒の山』:83
 かなり気に入っている本格ファンタジー(『指輪物語』の亜流の一つかも知れないけれど…)。世界もよくできているし、いろいろなことにきちんと意味があるところが良かった。結末で記憶を曖昧にしないところも。続編を英語で読みかけたが挫折。日本語で読みたい~。
陳 伯吹 チン,ハクスイ(チェン,ポーチュイ)
『ネコ大王のぼうけん』:86
 IBBY(国際児童図書評議会)のシンポジウムで話を聞いた関係で読んだ。中国ではかなり「進歩的」な人なのだろうが、まだまだ児童文学は教育と切り離せないのだなということを感じた。
ディキンソン(ディッキンソン),ピーター
『青い鷹』:85『過去にもどされた国』:86『悪魔の子どもたち』:86『キングとジョーカー』:86
 『青い鷹』は、古代エジプトは好きだし、イメージが美しかったので好み。『過去にもどされた国』『悪魔の子どもたち』はIFの世界もののSFで、こういう作品は児童文学には珍しいと思う。
ディヤング(デヨング),マインダート
『びりっかすの子ねこ』:76以前『運河と風車とスケートと』:00『丘はうたう』:83
 『びりっかすの子ねこ』は子猫の切なさがずっと印象に残っていた。動物ものを中心にたくさん訳されたが、今はもうあまり読まれていないかも。『運河と風車とスケートと』はスケートがしたい少年の心がよく出ているだけでなく、校長先生をはじめ大人たちもこぞってスケートを楽しんでいるのがおもしろい。
テイラー,シオドア(セオドア)
『ありがとうチモシー』:82以前
 小さな無人島でのサバイバル生活がリアルだった。
ディラン,アリッシュ
『マナナンのかくれ島』:83
 ケルト神話の神様の名前が気になって手に取ったもの。中味はファンタジーとは関係ない冒険ものだが。
デフォー,ダニエル
『ロビンソン・クルーソー』
 実はちゃんと読んでいないかもしれない。本来は児童文学ではないが、道具作りなど子どもに受けるところも多い。ウィルキー・コリンズのミステリー『月長石』にはこの作品を人生の書にしている執事さんが出て来たっけ。
デュボア,ウィリアム・ペーン
「二十一の気球」:76以前
 別の話(「オズ」と「ドリトル先生」)と一緒に入っている全集もので読んだが、主人公は大人だし、風刺的なところもあるので、大人向けの話でもいいのではと思った。
デ・ラ・メア,ウォルター
『ムルガーのはるかな旅』(ハヤカワ文庫FT):83
 最後のところが何だかよくわからなかった。最近のアニメの「ヤン坊・ニン坊・トン坊」は別の話だと思った方がいいでしょう(昔のは知らないけど)。
トウェイン(トウェーン),マーク
『トム・ソーヤーの冒険』『ハックルベリー・フィンの冒険』:87『王子とこじき』
 『トム・ソーヤーの冒険』は多分一部をダイジェストでしか読んでいない。『ハックルベリー・フィンの冒険』は、後半の詐欺師との部分が案外長かった。基本的には逃亡奴隷を擁護するこの話(当時としては異端だったはず)を、今日表面的な言葉づかいだけで人種差別的とするのは薄っぺらな読み方だと思う。『王子とこじき』も読んだのは抄訳かも。
ドーデー,アルフォンス
「最後の授業」
 教科書に載っていた定番の感動もの。どちら側とも言いにくいこの地域に関して偏った見方をさせるものでは?
ドナルドソン,ステファン
『破滅の種子』:84『邪悪な石の戦い』:85『たもたれた力』:85
 「アメリカの指輪物語」。世界の設定はよくできていて大変美しくて好きだし、ストーリーもとても読みごたえがあって良い(かなり疲れるが)。しかし主人公がくら~い奴なのが最大の欠点(それが必要なのはわかるけど)。中心となっていた訳者の方が亡くなったので、続編はもう出ないだろうな…。
ドネリー,エルフィー
『わたしはふたつにわれない』:85
 現代の家族の離婚もの。子どもっぽい親が情けない。こういう作品はよくできていても、読んでいてちょっと辛いので心から好きとは言いにくい。
トペリウス,サカリアス
『星のひとみ』:86
 美しいイメージの民話集。
トーミン,ユーリー
『魔法使いがやってきた』:82以前
 珍しいのではないかと思われるソ連のファンタジー。いろいろあっても現実のありのままが良いとなるのはちょっと教訓的か。
ド・モーガン,メアリ
『風の妖精たち』:85
 地味な物語集だが結構好きだった。
トラヴァース(トラバース),パメラ・L.
『風にのってきたメアリー・ポピンズ』:80以前『帰ってきたメアリー・ポピンズ』:80以前『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』:80以前『公園のメアリー・ポピンズ』:80以前
 天邪鬼なメアリー・ポピンズの言動がとても楽しい。ベッドには悪い側があるとか、赤ちゃんは鳥と話せるなどの、いろいろなエピソードがそれぞれ印象に残る。
トリーズ(トゥリーズ),ジェフリー
『この湖にボート禁止』:84『黒旗山のなぞ』:84『ローマへの船』:84
 『この湖にボート禁止』『黒旗山のなぞ』は、日常的な冒険ものの連作で結構おもしろかったのだが、あと3作の続編が訳されなかったのが残念。福武文庫に入ったときも期待したんだけど。
ドリュオン,モーリス
『みどりのゆび』:83
 教訓的なのはともかく、最後の終わり方がいただけない。ところで植物を育てるのがうまい人という「みどりのゆび」っていう考え方は、この話のオリジナルではなくてそういう言い方があるんでしょうか?
トールキン(トーキン),J.R.R.
『ホビットの冒険』:81『旅の仲間』:81『二つの塔』:82『王の帰還』:82『シルマリルの物語』:82『トールキン小品集』:82『農夫ジャイルズの冒険』(都市出版社):82?『ファンタジーの世界』:82『サンタ・クロースからの手紙』:81以前
 『ホビットの冒険』は<ナルニア>などより華やかさと潤いが少ないが、おもしろいのは言うまでもない。<指輪物語>は、私の中の「三大ファンタジー」の一つ。大学受験前で読み飛ばしたくなかったので、『旅の仲間』読了後続きを読むのを我慢した。結末はわかっているようなものなので、細部までじっくり読んだ。創作神話『シルマリルの物語』は<指輪物語>では老成しているエルフが血の気が多いのがおもしろかった。神話の好きな人向き。都市出版社の『農夫ジャイルズの冒険』は今では単なるコレクターズ・アイテムかも。『ファンタジーの世界』は児童文学やファンタジーの研究には重要な文献だが、通読は少々しんどかった。『サンタ・クロースからの手紙』はこの作家の凝り性ぶりがよく現われているもの。
トルストイ,レフ・N.
『イワンのばか』
 絵本か何かでしか読んでいないかも。

ナ行

ニクソン,ジョーン・ラウリー
『クリスティーナの誘拐』:93
 主人公の自立というテーマに押されて犯人の追及がどうでもいいようになってしまった感じで、ミステリー性は少々弱い。
ネストリンガー,クリスティーネ
『きゅうりの王さま やっつけろ』:98
 奇想天外なものが出て来るという点ではファンタジーだが、基本的には現代の家族の問題を扱ったリアリズムの話だと思った。
ネズビット,イーディス
『砂の妖精』:83『宝さがしの子どもたち』:87『緑の国のわらい鳥』:82以前
 『砂の妖精』は現代で妖精の力が衰えている(研究書にこうあった)なんて別に思わなかったけど…。他愛ない望みがかなってしまうと苦労するというのがおかしい話。『宝さがしの子どもたち』も古いけど割とおもしろかった。『緑の国のわらい鳥』は奇妙な感じがする話だった。
ノイマン,ルードルフ
『魔法のぼうしはどこ?』:98
 何となく気になっていたタイトルだったので…。
ノース,スターリング
『はるかなるわがラスカル』:88
 古本屋で見つけて読んだ。動物ものの名作。
ノーソフ,ニコライ・ニコラエヴィチ
『ヴィーチャと学校友だち』:76以前『ピストル』:76以前『ネズナイカのぼうけん』:83
 『ヴィーチャと学校友だち』は名作ということになっているがおもしろくなかった(でもどうおもしろくなかったかは忘れた)。『ネズナイカのぼうけん』は柏葉幸子の『霧のむこうのふしぎな町』に主人公の好きな話として出てきたので読んだ(同じ話かどうかはわからないが)。
ノートン,メアリー
『床下の小人たち』:83
 子どものうちに読んでいれば、続編までどんどん読んだだろうな…。道具を工夫するところなどがおもしろい。

ハ行

バイアーズ(バイヤース),ベッツイ
『白鳥の夏』:82以前
 思春期の悩める少女もの(といっても恋愛ものではなかったと思う…)。ニューベリー賞だけど私には今一つだったなあ。オレンジの運動靴がうまく染め変えられないってところが印象に残っているけど。
ハイウォーター,ジュマーク
『アンパオ』:90
 アメリカン・インディアン(ネイティブ)の伝説をもとにした不思議な話だった。そう言えば、読んでないけど<<幻の馬>物語>の第4部はどうしたんだろう?
パイル,ハワード
『ロビン・フッドのゆかいな冒険』:86『銀のうでのオットー』:84
 『銀のうでのオットー』は古めかしい感じの絵と文体が合っていて良かった(あ、文体は訳者の腕がいいからかな)。淡々とした話だが趣があって結構好き。『ロビン・フッドのゆかいな冒険』は楽しい物語。ロビン・フッド伝説を手軽に知るにもいい本。
バウアー,マリオン・デーン
『家出』:82以前
 砂漠は、人生は甘くないということを説得力を持って描き出しているお話。いや別にそんなに説教臭くなくてよくできている話です。
ハウゲン,トールモー
『夜の鳥』:98『少年ヨアキム』:98
 現代の崩壊する家族もの(それだけじゃないけど)。父親がちょっと情けないなあ。子どもの心理がよく書けてると思う。
パウゼヴァング,グードルン
『見えない雲』:98
 テーマ性がはっきりしている物語だが、こういう話も必要かもしれない。ちょっと単純過ぎるかもしれないけど。原発事故の話なのであまり歓迎しない向きもあったらしい。
バウマン,ハンス
『草原の子ら』:86『ハンニバルの象つかい』:98
 『草原の子ら』『ハンニバルの象つかい』はともに、華やかな歴史上の人物の影になった人物や裏から見た事情の物語。よく書けている歴史ものは読みでがある。
バージェス,ソーントン・ワルドー
<バージェス アニマル・ブックス>:76以前
 全部読んだかどうかは覚えていないのだが、小学生時代に図書館でよく借りて読んだシリーズ。結構おもしろかったと思うが、一作ごとの印象があまりなく、軽い読み物なのですっと読んで忘れてしまうタイプの作品かも。冬、うさぎに木の皮を食べられないように網をまくエピソードがどれかにあったっけ…。
バジョーフ,パーヴェル・ペトローヴィチ
『石の花』(岩波少年文庫):85
 神秘的で美しいロシアの民話。その美しさが結構好き。
パターソン,キャサリン
『ガラスの家族』:85『テラビシアにかける橋』:10
 『ガラスの家族』はちょっと辛い現代の家族ものだが、主人公のパワーが救い(性格悪いけどね)。"The Great Gilly Hopkins"という原題が似合う。本名はトールキンの『指輪物語』から来ていてガラドリエルっていうんだけど…。うまい作家だが、現代ものは読んでいてやっぱり少し辛い。
 『テラビシアにかける橋』は周囲から少し浮いている少年と少女の物語。2007年に二度目の映画化、テレビでやっていた予告編はまるでファンタジーのようで、「これってそういう話だったっけか?」と思って読んでみた。「秘密の場所」で空想の国を作るが、今回の映画はその空想の国を視覚化して派手に予告していたようだ。原作は少なくともばりばりのリアリズム作品だった。コンパクトにまとまった話で、よくできた良い話だと思う。とはいえ、わかっていて読んだのだが、それでも結末は少し辛い。
ハッチ,メリー・C.
『ものいうなべ』
 標題作はお話テープになっているのを昔よく聞いた(小学校の時の給食の時間に)。
バーネット,フランセス・ホジソン
『小公子』:76以前『小公女』:76以前『秘密の花園』:76以前
 いい子たちの『小公子』『小公女』も安心して読めるいい話だが、ちょっとひねくれた子が出て来る『秘密の花園』が結構好きだった。庭園の描写も素敵だったし。良い古典は下手なダイジェストでなく読みたいもの。
バーバ,アントニア
『ロッカバイ・ベイビー誘拐事件』:82以前『幽霊』:84
 『ロッカバイ・ベイビー誘拐事件』は現代の子どもたちの探偵もの。『幽霊』は私の好きなイギリスの古い屋敷もの。このての幽霊ものは全然怖くない。
バビット,ナタリー
『時をさまようタック』:93『悪魔の物語』:98
 『時をさまようタック』は陰鬱な重苦しい感じのファンタジーだったが、『悪魔の物語』は楽しく読めるお話だった。一つの作品だけで作家の傾向を判断するのは危険という一例。
ハミルトン,ヴァジニア
『わたしは女王を見たのか』:83
 邦題が印象的。アフリカ出身の人々の誇りが感じられる作品。
ハムズン,マリー
『小さい牛追い』
 教科書に載っていた作品(いつのだったか?)。牧場でパンやチーズを食べるシーンが印象に残っているが、本当にこの話だったか…? 教科書の掲載分しか読んでいないと思うので、多分全部は読んでいない。
バラージュ,ベラ
『ほんとうの空色』:88
 「ファンタジー」というより「寓話」という言葉が似合うような…。でもあんな絵の具、欲しいな。
バリ,ジェイムズ・マシュー
『ピーター・パン』
 家にあった全集ものの端本で読んだと思うが、完訳ではなかったかもしれないし、そもそもちゃんと読んでないかも。ピーターは幼児というよりかなり大きな少年のような印象なのは挿絵やアニメの影響かな。
ハリス,ルース・エルウィン
『丘の上のセーラ』:92『フランセスの青春』:92『海を渡るジュリア』:93『グウェンの旅立ち』:95
 同じ時代・同じ出来事を4人姉妹それぞれの視点から語り直すという形が、性格や立場の違いなどを描き分けていておもしろい。続巻のセーラのその後と隣家のルーシーの話が待ち遠しい。
ハリス,ローズマリー
『遠い日の歌がきこえる』:87
 微妙な味わいのファンタジー。あの年代なのに性的な感情が描かれてないのが不自然という評価もあったようだが、そういうものをすでに越えちゃっているというのもあるんじゃないかと思う。後書きで訳者が自分のことをだらだら書いているのは余計。
バルトス=ヘップナー,バルバラ
『コサック軍シベリアをゆく』:84『急げ草原の王のもとへ』:84『なだれだ!行けそうさく犬』:84
 『コサック軍シベリアをゆく』『急げ草原の王のもとへ』は骨太な説得力ある歴史ものでとても読みごたえがあって良かった。世界史の中で一言でかたづけられているようなことにも、いろいろなドラマがあることを感じさせる。どちらも劣勢の側から書かれているので少し悲しいが。
ハンセン,カーラ
『こうさぎのぼうけん』:76以前
 文章担当ということでこの人を見出しにしてみたが、絵を担当している夫のヴィル・ハンセンの方が主導しているようで合作という形になっている。ヴィル・ハンセンの漫画の邦訳も出ている。
ハンター,モーリー
『魔の山』:83『砦』:83
 『魔の山』は「いい人たち」と言われる妖精のことがよくわかる物語だったと思う。『砦』の方はなるほどこうだったのか(もしれない)と思わせる、読みごたえのある歴史物語になっている。
ハント,アイリーン
『ジュリー』:82
 よくできた少女小説だが、あまり有名じゃないのが残念。『赤毛のアン』はあんなに有名なのになあ。女の子と頑固なおばさんという定形。
バーンフォード(バンフォード),シーラ
『信じられぬ旅』:87『ベル・リア』:81以前
 『信じられぬ旅』は一番大変なところが書いてないのがちょっとはぐらかされたような、本当らしいような…。『ベル・リア』は三人の人間それぞれとのかかわりがおもしろい。個人的には第二部の武骨なマクリーンが好き。
ピアス,フィリパ
『トムは真夜中の庭で』:81以前『ハヤ号セイ川をいく』:86『まぼろしの小さい犬』:83『まよなかのパーテイー』:86『サティン入江のなぞ』:86『りす女房』:83?
 『トムは真夜中の庭で』はラストの良さが最初はあまりピンと来なかった。おばあさんじゃしょうがないじゃん、なんて思ってしまった。いやよくできたいい話なんだけどね。この話の評判が良すぎるせいかも。『ハヤ号セイ川をいく』は単純な冒険物語として楽しめた。『まぼろしの小さい犬』は主人公の思いが辛かった。『まよなかのパーテイー』は味のある短編集。IBBY(国際児童図書評議会)のシンポジウムとその後の公会堂での講演で、語りのうまい人だなあと感じた。新刊だった『サティン入江のなぞ』をいかにも読みたくなるように紹介するので思わず読んでしまったぞ。
ピアソン,キット
『丘の家、夢の家族』:04
 ゴースト・ストーリー的な部分や「魔法」的な部分もあるが、基本的には辛い家庭環境を抱えて本の世界に慰めを見出だしている少女のリアリズムの話。なので最初は読むのが少し辛かったが、一応「ハッピーエンド」と言える終わり方だし、とても良い物語であると思う。しかし情けない母親に対して9歳の子どもが「成長」しなければならないのはなあ…。「想像力の効用」を示している話。ちょっとジョーン・G.ロビンソンの『思い出のマーニー』を思い出させる。
ビアンコ,マージェリイ
『かぎのない箱』:76以前
 語り口のうまいフィンランドの民話集。イメージが美しくて大好きな作品集の一つ。寺島竜一の絵も良い。この人の他の作品は読んでないけど。
‘BB’(ビービー)
『少年と黒魔女の淵』:88
 タイトルがちょっとファンタジーみたいだが、実は釣りの話。釣りがテーマなんて、児童文学には珍しいんじゃないかな?
ヒメネス,ファン・ラモン
『プラテーロとわたし』:88
 「子どものための」ということだが、どちらかというと大人向けのエッセイ風の作品だと思う。
ヒューズ,モニカ
『リングライズ リングセット』:87
 珍しい児童もののSF。でも今一つだったかな…。
ヒューズ,リチャード
『クモの宮殿』:84
 軽く明るいナンセンスな味の物語集。なぜそうなのかとか、あまり追及しちゃいけない…。
ヒルディック,エドモンド・ウォレス
『こちらマガーク探偵団』:98
 軽いノリの連作シリーズ。こういうのも悪くないよね。<ズッコケ>シリーズみたいに日本の作品かと思っていたような気がする。
ファージョン,エリナー
『ムギと王さま』(岩波少年文庫):84『リンゴ畑のマーティン・ピピン』:86『銀のシギ』:76?
 『銀のシギ』は小学生のとき演劇部が上演したのをきっかけに読んだ。民話をファージョン風にアレンジしたもの。色鮮やかできれいだった印象がある。『ムギと王さま』は語りの滑らかな物語集。訳もいいんだろうな。『リンゴ畑のマーティン・ピピン』は大人のための恋物語だと思うんだけど…。
ファーマー,ペネロピ
『夏の小鳥たち』:83『冬の日のエマ』:83『ある朝、シャーロットは…』:83『骨の城』:83
 『夏の小鳥たち』『冬の日のエマ』『ある朝、シャーロットは…』の連作の中では、タイム・ファンタジーとしてわかりやすい『シャーロット』が一番おもしろかったかな。ちょっと変わった雰囲気の作品を書く人で、『骨の城』も風変わりなファンタジーだったような…。
フェルプス,エセル・ジョンストン
『ボロずきんの冒険』:95
 女性が活躍する話を集めた民話集。忘れられがちになっている話だというが…。同じ出版社の『アリーテ姫の冒険』よりも数段おもしろいぞ。こっちの方をもっと宣伝したら?
ブッシュ,ヘレン
『海辺のたから』:82以前
 実在の人物の伝記物語とのことだが、よくできていて魅力的な物語になっている。「はちみつチョコレート」の化石が欲しくなる。
プライス,スーザン
『ゴースト・ドラム』:93
 民話を思わせる荒々しさのある物語。主人公が途中で死んでしまうのには、どうなることかと思った。
ブライトン,イーニッド(エニド)
『冒険の島』:98『おちゃめなふたご』:15
 600作もの作品を書いたという「職業作家」。『冒険の島』はまあおもしろかったし子どもたちはよく書けてると思うけど、他の人物の描写や設定がやや薄っぺらな感じを与える。質が一流でないといくらたくさん書いて一時的に売れっ子になっても後には残らないんだろうなあ。でも量を書くのも一つの才能だしよく読まれているんだろうから、もう少し評価されてもいい人じゃないかと思う。
 『おちゃめなふたご』は双子の姉妹の学園ものの少女小説シリーズの第1作。軽妙なノリで、日本でも人気があったシリーズじゃないかな。主人公の双子、特にパットの方が最初はわがままで鼻持ちならない感じだったりするが、本当に「悪い子」なわけではなく、意地悪な感じに見えた級友ともちょっとしたことで仲良くなったりして、初めは嫌っていた学院にとけこんでいく。主人公や級友は特別にいい子やできる子ではなく、いたずらしたり失敗したり規則を破ったりと、生き生きと動く等身大の子どもたちで、ブライトンはやはりこういうのがうまいので、それが人気の所以だと思う。最初の翻訳はポプラ社文庫で、続編を含め6作全部出版されているが、「訳」ではなく「文」と表記してあって(のちの版では「訳」)、何となく展開が早い気もするので全訳ではなくて抄訳かリライト版なのかも。
ブリッグズ,キャサリン・M.
『妖精ディックのたたかい』:88『魔女とふたりのケイト』:88
 『妖精ディックのたたかい』『魔女とふたりのケイト』は民話研究者の面目躍如なんだけど、どちらも物語としての詰めが少し甘いような気がした。『魔女とふたりのケイト』の方が好きだったかな。頑張る女性の話。
ブリッシェン,エドワード
『金色の影』:81?『とげのあるパラダイス』:83
 ガーフィールドと共著の『金色の影』はどの辺を担当したのかな? 生き生きした神話を色あせたつまらない話に再話したようであまりいただけなかったのだけど…。編集を担当した『とげのあるパラダイス』の方はおもしろかった。基本的に編集者の人なのだろう。
プリョイセン,アルフ
『小さなスプーンおばさん』:76以前『スプーンおばさんのぼうけん』:76以前
 それぞれのエピソード、ディテールが楽しめる、とてもおもしろい話だった。小物をいろいろ使うのが楽しい。3作目はどうして読まなかったのかな?
ブリンズミード,ヘスバ・フェイ
『青さぎ牧場』:87
 まだ少ないオーストラリアの児童文学。地味な印象の話だが、結構おもしろく読んだと思う。ところで邦訳では原著者の名前が「ヘブサ」となっているが、原綴りの読み間違いではないだろうか?
ブルックナー,カルル
『黄金のファラオ』:98
 昔気になったが読みそこねた本だったので今回読んでみた。後半三分の二はノンフィクションの形だが、興味深く読めた。古代エジプトって好きだし。
ブルフィンチ,トマス
『ギリシア・ローマ神話』:76以前
 ギリシア・ローマ神話の基本はこの本で知った…ような気がする。
プルマン,フィリップ
『黄金の羅針盤』:03『神秘の短剣』:03『琥珀の望遠鏡』:04
 分厚くて読みでのあるファンタジー。現実と微妙に異なる別世界から始まるが、2作目では我々の世界も出てきて、やがてさらに多くの世界とそれぞれの世界の生き物がいろいろ出てくる。欲を言えばもっともっといろいろ書き込んで欲しかった(各世界の様子やアスリエル卿はどうやってあそこに拠点を築いたのか?とか「天使」とは何か?とか…)。  主人公のライラはわがままな感じもするが元気で良かったが、2作目でどちらかというと静的なキャラクターであるウィルが出てきて主人公が二人になったときは、ライラの影が薄くなってちょっと読みにくくなったような気がする。ミーハー的にはクマのイオレク・バーニソンが良いが、空を飛ぶ「魔女」や善悪定めきれないコールター夫人やはじめは「味方」ではなかったガリベスピアンやハーピーなどのキャラクターもおもしろい。ミュレファは今一つヴィジュアルなイメージがつかめなかった。多くの世界とつながっているチッタガーゼは<ナルニア>の「世界と世界のあいだの林」からの発想かも。  宗教戦争のような話になるとは予想していなかったが、日本人読者はともかく敬虔なクリスチャンの人には抵抗があるだろうし、こういう「宗教・哲学テーマ」のような作品は好き嫌いが分かれるところがありそう。全体的にはよくできていてファンタジーの物語としておもしろかったが、ラストは個人的には不満。
プロイスラー,オトフリート
『小さい魔女』:98『小さいおばけ』:80以前『クラバート』:84『大どろぼうホッツェンプロッツ』:15『大どろぼうホッツェンプロッツふたたびあらわる』:15『大どろぼうホッツェンプロッツ三たびあらわる』:15
 『小さいおばけ』はおばけがとってもかわいくて好きだった。『小さい魔女』も愉快な話で楽しかった。『クラバート』は民話調のスリルあふれるファンタジー。ホッツェンプロッツのシリーズは読みのがしてしまったなあ。法政大学での児童文学シンポジウムで見た氏は、にこにこした感じのいい太った小父さんで、話もおもしろかった。講演の内容も事前にきちんと作ってあったようで、レジュメも同時通訳も大変わかりやすくて良かった(ドイツ人はきちょうめんだからか?)。
 「ホッツェンプロッツ」のシリーズは二人の少年が、最初の2作は「大どろぼうホッツェンプロッツ」をつかまえようと、3作目は改心した彼を周囲に認めさせようと頑張る話。おもしろかったけど、子どものうちに読むべきだったなあ。車とか出てくるので現代の話だと思うし、魔法使いや妖精や千里眼の女性などが出てくるけど、あんまり「ファンタジー」な感じはしないよね、この話。ホッツェンプロッツをやっつける少年たちは別に魔法とかは使えないし、動物はしゃべったりしないし。出版社のサイトには「3・4年生から」と書いてあるけど、「幼年童話」というか「おとぎ話」っていう感じか。あとちょっと気になるのは主人公のカスパールとゼッペルは兄弟じゃなくて友だちとなってるけど、同じ家に住んでるみたいなんだよね。「カスパールのおばあさん」は出てくるけど、親の話は出てこないし、そういうある意味生活感がないところも「おとぎ話」っぽい。深く考えずテンポの良い物語を楽しめば良い本。
フロロフ,ワジム
『愛について』:87
 地味な話で結末も決して楽しくないけれど、説得力があって結構好きだったりする。ラストで主人公が納得するところがいいんだよなあ。ソ連にも理想に燃える青少年だけでなく、思春期の悩める青少年もいるんだなあと(当たり前だが)実感させてくれる物語。あまり読まれていないだろうと思うと残念。いい話なのに。
ペイヴァー,ミシェル
『オオカミ族の少年』:20『生霊わたり』:20『魂食らい』:20『追放されしもの』:20『復讐の誓い』:20『決戦のとき』:20
 食べ物や道具、狩りなどの生活面の描写は、作者自身がいろいろ調べさらに体験して把握した中で書かれているのでリアリティがあり、安心して読める感じ。ジーン・アウルの<大地の子エイラ>ほど細密ではないかもしれないが、エイラにあった精神面とのギャップが少なくて物語としてはバランスがいいと思う。エイラよりファンタジー色もある。オオカミのウルフはいい子だ。レンは初対面から「相棒」になるなと思っていたぞ。レンにも秘密があって、みんないろいろ大変だ。トラクは一人で旅立って…というのが現実的な流れかなあとハラハラしたけど、やったぜ! でもこのシリーズは脇に出てくる人が割と死ぬよな…初っ端のお父さんに始まって。でも途中でこの人死ぬよなーと思っていた人が最後まで生き残ってびっくり。
 昔の時代の物語を現代に新しく書くとき、モデルにした時代が男偏重社会だったからといって今それをそのまま書くのは好ましくないし、かといってことさらに男女平等みたいにするのも不自然だしで難しいよな。「女は魔導師になれない」っていう氏族もいるし男女役割分担的なものもでてくるけど、セイアンやレンは女性だし、〈魂食らい〉の魔導師も半数近くは女で、中でも女性のイオストラがいちばん力がある者として書かれているのはバランスか。全体的にこうなるだろうな、という予想はあまり裏切らない話だけど、読みごたえはある良い物語だった。入院中に読み出して2か月余でシリーズ読了。おもしろかったよ!
ペイトン,K.M.
『愛の旅だち』:81?『雲のはて』:81?『めぐりくる夏』:81?『バラの構図』:84
 <フランバーズ屋敷の人びと>は4作目は読んでないのだが、あの二人の組み合わせは現実的でいかにもありそうだったしそれなりにやっていけそうだとはいえ、一時的な関係にして『めぐりくる夏』の前にして欲しかったなあ。まだ続きがあったりして…。ヤング・アダルト版の『風と共に去りぬ』だね。『バラの構図』は結末が甘いっていう話もあるけど。
ベイリー,キャロライン・シャーウィン(ベイレイ,キャロリン・S.)
『ミス・ヒッコリーと森のなかまたち』:80以前
 人形&動物ファンタジーとでも言うのかな? 結末にはびっくりした。
ベーカー,マイケル
『黒岳と夏星の国』:89
 ウェールズの伝説をもとにしたファンタジー。ハッピーエンドじゃなかった気がしていたが、読み返してみたらあれでいいという気になった。
ヘルトリング,ペーター
『ヒルベルという子がいた』:88
 情緒障害児の心と行動が(おそらく)非常によく書けている話だと思う。よくできた物語だが、ヒルベルのために悲しまずにはいられない。
ベレアーズ,ジョン
『壁のなかの時計』:18
 この物語は話が論理的に進まない感じがして、私には合わない気がした。引き取られた叔父さんやその家には何やら不思議なことがあるのだが、主人公は大して疑問に思うこともなく受け入れてしまう。そして友達の歓心を買うために、ちょっと考えてもやったらまずそうな死人を蘇らせる呪文なんてものに手を出してしまう。もう少し考えて行動して欲しいなあ。自分の不始末を自分で何とかしようとする心意気は買うが、魔法の知識もなく行き当たりばったりみたいだし、最後の解決方法もたまたまうまくいったような感じがしてしまう。世界の存亡にかかわるようなことと言われながら、割とゆるーい方法で解決してしまう意外性がおもしろいとも言えるのだが。続編も読むともう少し印象が変わるのだろうか。
ペロー,シャルル
『長ぐつをはいたねこ』
 作品数が少ないのが意外だった。民話の再話だがグリムより創作的な面が強いらしい。昔家にあった本に入っていた、後日談付きの「眠り姫」の話が印象に残っている。 い。
ベンマン,ハンス
『石と笛』:00
 「児童文学」ではない気もするが、<エイラ>や<コブナント>も入れているからいいことにしよう…。一種の「成長物語」だし。英米のファンタジーとは一味違ったいぶし銀的な味わいのある「教養小説」的な「メルヘン・ロマン」。いかにもドイツの作品らしく、「愛」とは何か、「平和」とは何かということを真面目に書いている話でもあると思う。だがそういう「寓意」や「教訓」を無理矢理読み解かなくても、この世界の風俗や魔法や冒険をじっくり楽しめる物語である。文庫版もあるが、安彦良和の表紙と口絵が自分的にはちょっといただけない。地味なのかあまり知られていないようなのが残念。
ホイク,ジクリト
『月の狩人』:90
 表紙のルソーの絵に魅かれて読んだ。ファンタジーかな? とも思った。違ったが、ちょっと不思議な感じの話だったような…。
ホーウッド(ホアウッド),ウィリアム
『ダンクトンの森』:91
 モグラの世界の『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』。ケネス・グレアムの『たのしい川べ』の続編も書いているが、イギリス人にとってこの地味な話は今でも根強い人気があるようでいつも不思議に思う。
ボウマン,ジェイムズ・C.
『かぎのない箱』:76以前
 フィンランドの民話集。イメージが美しくて大好きな作品集の一つ。アメリカではヨーロッパ各地の民話研究が盛んなのかな?
ホガード,エリック・C.
『バイキングのハーコン』:83『どれい少女ヘルガ』:83『小さな魚』:85
 『バイキングのハーコン』『どれい少女ヘルガ』は北欧の神話や物語、歴史ものが好きな身にはおもしろかった。『小さな魚』は戦争児童文学だからなあ…。
ボストン,ルーシー・マリア
『グリーン・ノウの子どもたち』:83『まぼろしの子どもたち』:83『グリーン・ノウの煙突』:83『グリーン・ノウの川』:83『グリーン・ノウのお客さま』:83『グリーン・ノウの魔女』:83『グリーン・ノウの石』:83『海のたまご』:83『みどりの魔法の城』:82以前『意地っぱりのおばかさん』:88
 <グリーン・ノウ物語>は古い屋敷ものの傑作。一作ごとに違った味わいがあるのもおもしろい。「子どもたち」にはすぐに会えなかったり、いつも会えるわけではなかったりする微妙なところがこのファンタジーの味でもある(ファンタジーじゃないのもあるけど…)。ただ、一冊ごとのヴォリュームが少なく感じられて、もっと子どものうちに読めば良かったと残念に思うことしきり。自伝『意地っぱりのおばかさん』は少々退屈だったが、ついこの間まで生きていた人の子ども時代があんなに大昔のことのようなのが不思議だった。あの家に知らずに下宿したなんて羨ましいぞ、林望氏!
ポーター,エレナ
『少女パレアナ』:82以前『パレアナの青春』:82以前
 こういう風に前向きに生きた方が、人生は断然楽しくて得だと思う。アメリカでは「パレアナ」が辞書に載るくらいだというけれど、日本ではそれほどじゃないかな(プリンス・エドワード島ツァーはあってもベルデングスヴィル(そもそも実在の地名?)・ツァーは聞いたことがない)。しかしいい話だなあ。この連作には他の人々の書いた続編があるというが、それって「本物」じゃないと思う…。
ポーター,ジーン
『そばかすの少年』:98『森の乙女』:89
 『そばかすの少年』はちょっとうまく行き過ぎるような気もするが、安心して読めるいい話。ああ竹宮恵子の絵が浮かんでしまう…。『森の乙女』は学資をかせぐために蛾を売るというのが異色な話だが、子どもの頃読んだ人は弁当のシーンが印象に残るらしい。母親が簡単に心変わりしすぎるような気もしたが。
ホッジズ,C.ウォルター
『アルフレッド王の戦い』:83『アルフレッド王の勝利』:83『空とぶ家』:82以前
 『アルフレッド王の戦い』『アルフレッド王の勝利』はサトクリフを思わせるしっかりした歴史ものでおもしろかった。「大王」アルフレッドも苦労したんだねえ…。『空とぶ家』は軽い話だが楽しく読めた。
ボーデン,ニーナ
『帰ってきたキャリー』:85『砦の町の秘密の反乱』:86
 『帰ってきたキャリー』はイギリスにも戦時の子どもの疎開があったんだなあという話。ヘプジィバーがちょっといい味。『砦の町の秘密の反乱』の方は、あんな風に終わって良かったんだろうか? そりゃ武力闘争はいいことじゃないけれど、友だちの父親をはじめ「良い」方の民主派の人々を殺すことになったかもしれないのに…。
ホーバン,ラッセル
『親子ネズミの冒険』:86
 おもちゃ&動物ファンタジー。この物語より、子どもの気持ちをよく表している絵本のフランシスのシリーズの方が私は好き。
ボーム(バウム),ライマン・フランク
『オズの魔法使い』:76以前『オズの虹の国』:81以前『オズのオズマ姫』:81以前
 『オズの魔法使い』も家にあった全集ものの端本で最初に読んだ。色鮮やかでいろいろな小物を使うのが気に入ったかも。映画(最初のもの)はかなり変えてはあるが、あれはあれで良い作品だと思う。夢オチなのはいただけないけど。いかにもアメリカ風の軽さがこのシリーズの味。このシリーズにも他の人々が書いた続編がたくさんあるが…。
ボーモン,ジャンヌ・マリー・ルプランス・ド
『美女と野獣』
 ギリシャ神話のプシュケとクピド(キューピッド)の話と似てたなあ。
ポールセン,ゲイリー
『ひとりぼっちの不時着』:06
 飛行機に乗っていて思わぬ事態からカナダの森林に不時着するはめになり、たった一人で生き抜いていく少年がサバイバル体験を通して成長していく様を描いたリアリズム小説。はじめは甘っちょろくて弱音を吐くばかりの都会っ子にちょっといらいらさせられるが、多くの試練や失敗を経ながら何とか「食べていく」―「生きていく」ことを学びとっていく様子は作者が自ら体験したことを盛り込んだノンフィクション的な部分もありリアルである。もし時期が冬だったら、または冬になっていたらどうだったろうなどと考えさせられる。サバイバルに「成功」はするが、両親の仲は結局元に戻らないなど主人公にとってはすべてハッピーエンドとはならない現実的な話でもある。
ホルム,イエンス・K.
『探偵キムと崖屋敷の秘密』:82以前
 ジュニア・ミステリーのシリーズだが、なぜこれだけ読んだのか不明。タイトルが気になったのかな? ドナルド・ソボルの<少年たんていブラウン>シリーズなどと同様、こういう軽く読めるシリーズものは後々までは残らないのだろうなあ。「ミステリー」が「純文学」よりも評価が低いのは児童文学でも同じなのかな。
ホワイト,アン・H.
『へんなネコのセラピナ』:88
 ちょっとファンタジーめいた不思議な猫の楽しいお話。
ホワイト,エルウィン・ブルックス
『シャーロットのおくりもの』:82以前
 ディズニー(?)のアニメで見たのが最初だったと思う。でもあれはクモの方をすごいと思うべきで、どうして人間がブタの方をすばらしいと思うのか疑問だったなあ。
ボンゼルス,ワルデマル
『みつばちマーヤの冒険』
 絵本かダイジェスト本かアニメ(あったっけ?)で見た程度で、もしかしたら全然読んでないかもしれない…。
ボンド,マイケル
『くまのパディントン』:86
 大人になってから読んだので、幼児のいたずらに手を焼かされる親のような気になってしまって、今一つ楽しめなかった。ブラウン一家は心が広いなあ。

マ行

マクギボン,ジーン
『ハル』:86
 地味で目立たない感じの話だがおもしろかった。イギリスの児童文学であまり描かれない貧しい層の子どもたちの話というのも珍しく興味深かった。
マクドナルド,ジョージ
『王女とゴブリン』:84『昼の少年と夜の少女』:83『黄金の鍵』(月刊ペン社):86『北風のうしろの国』(ハヤカワ文庫FT):84
 『王女とゴブリン』は太平出版社の方で読んだが、アーサー・ヒューズの絵で読むべきだったかなあ。でも竹宮恵子の表紙はやめてー。あの人の絵は大変はっきりしたイメージを与える「漫画」の絵なのでイメージが固定化されてしまう。どうしても使うなら中の絵も全部竹宮恵子にすれば?(ギャップが激しすぎる) 『北風のうしろの国』の結末はやっぱりいただけないなあ。『昼の少年と夜の少女』の方が好き。全体的に、もはや一昔前のものという感じがする。
マクニッシュ,クリフ
『レイチェルと滅びの呪文』:06
 突然悪い魔女に別世界に連れて行かれてしまった姉弟だが、実は彼らには思わぬ役割が…というこれも言ってみればよくあるようなファンタジー。主人公の性格や心が定まらない様子、グロテスクでスリリングな展開が殺伐とした描写に感じられて何となく読みにくく、三部作ながら続編を読む気になれなかった。
マクラクラン,パトリシア
『のっぽのサラ』:88
 軽い話だが確かにいい話ではある。短い話でもニューベリー賞は取れるんだなあ。
マゴリアン,ミシェル
『おやすみなさいトムさん』:92
 ニーナ・ボーデンの『帰ってきたキャリー』と同じく、疎開があった第二次大戦時のイギリスの戦争児童文学。というより実の親による児童虐待もの、かな。子どもが辛そうでしんどいが、トムじいさんがいい味。
マチーセン,エゴン
『あおい目のこねこ』:76以前
 実体は絵本でブックリストにも絵本で分類されていたりするが、形態が読み物だと思ったので…。「なんにも食べないよりは、ましでした」「なんにも食べないほうが、ましでした」などのフレーズをいろいろな場面で応用できるほどよく読んだ好きな物語だが、ネズミにとってははた迷惑な話かも。結構長いと思うが幼児でも読める楽しい話。
マックロスキー,ロバート
『ゆかいなホーマーくん』:86『かもさんおとおり』:76以前『サリーのこけももつみ』:99『海べのあさ』:99『すばらしいとき』:99
 『ゆかいなホーマーくん』は愉快な物語だったと思うが、この人は何と言っても『かもさんおとおり』に始まる絵本作家。ほのぼのとしたいい時代だったんだなあ。カルガモの引っ越しが話題になったときすぐこの話を思い出したが、世の中一般にはあまり知られてないらしく、この絵本の話は出ていなかったような…。自分の娘たちをモデルにした『サリーのこけももつみ』『海べのあさ』『すばらしいとき』はもちろんよくできていて気に入ったが、それほどドラマチックな物語ではないので大人への方が受けるかな(わりと最近読んだことによる感想だからか?)。
マーヒー(マヘイ/メイヒー),マーガレット
『めざめれば魔女』:90『海賊の大パーティ』:84『魔法使いのチョコレート・ケーキ』:01
 物語のうまい人だと思うが、比較的新しい人なのであまりたくさん読んでいない。『海賊の大パーティ』は楽しい小品集。山賊を図書館に「受入」して「配架」しちゃったりするのがおかしい。『めざめれば魔女』はちょっとこわいが「魔女になる」という発想がおもしろい物語。ファンタジーだがニュージーランドの現実生活も描かれていて興味深い。『魔法使いのチョコレート・ケーキ』は子どもに読み聞かせる形で読んだが、割と「奇妙な味」の物語が多かった感じ。この人の「高学年向き」の物語にややホラーっぽい感じがあるのと同じか。
マーフィ,ジル
『魔女学校の一年生』:15
 魔女学校の劣等生、ドジ魔女ミルドレッドの物語。原書1974年刊なので、「魔法学校もの」としては結構古いものかも。嫌な同級生や厳しい先生がいるのは普通の学園ものと同じかな。魔女が黒ネコを連れている理由は「むかしからそうしてきた」からだけなのか! 短めな話だが、1993年までに数年おきに4作書かれた。解説を読むとまだ2年生のようだが、もしかしたら本国では5年生で卒業するまで出たのだろうか?
マルシャーク,サムイル・ヤコヴレヴィチ
『森は生きている』:87『とんまなおじさん』:80以前『しずかなおはなし』:84『どうぶつのこどもたち』:76以前
 『森は生きている』は美しいイメージの話だった。子どもの読み物としての戯曲は珍しいのでは。詩集『とんまなおじさん』は「バセナヤどおりのとんまなおじさん」とか調子のいい詩が多くて楽しかった(半分は訳者の功績か?)。『しずかなおはなし』は本当に静かなお話だが、結構この絵本が好きな子どももいるらしい。『どうぶつのこどもたち』の中の「ばかな子ねずみ」は、あれは子がばかなんじゃなくて親がばかなんだと思うんだけど…。
マロ,エクトール・アンリ
『家なき子』『家なき娘』
 多分名作ダイジェストのようなもので読んだんだと思う。そういえば私は『家なき子』と「母をたずねて三千里」(アミーチスの『クオレ』の一部)を同じものかと思っていた。『家なき子』の主人公の名はレミ(ものによってはルミ)で、これだけ見ると『家なき娘』とも混同しそう。アニメの題もこちら(『家なき娘』)は「ペリーヌ物語」で全然違うしなあ。
ミラー,アーサー
『ジェインのもうふ』:82以前
 結構印象に残る話だが、この話の作者が著名な劇作家とは知らなかった。
ミルン,A.A.
『クマのプーさん』:99『プー横丁にたった家』:99『赤い館の秘密』:81以前『ユーラリア国騒動記』:90
 『クマのプーさん』『プー横丁にたった家』は、実はディズニー・アニメ絵本みたいのしか読んでなかった気がしたので、この機にきちんと読んでみた。もっと子どもの頃にちゃんと読んでおくべきだったなあ。うん、名作ですけど。『赤い館の秘密』は普通のミステリだったような…。『ユーラリア国騒動記』は一応大人向けの話ということになっているらしいが、ユーモア・ファンタジーだから子ども向けとしてもいいんじゃないかなあ。
ムサトフ,アレクセイ
『こぐま星座』:87
 社会主義の農村を理想とする物語だが、健全で分かりやすくて結構好きだった。でももうこういう話は消えていく運命にあるんだろうな。
メイスフィールド(メースフィールド),ジョン
『ニワトリ号一番のり』:99『夜中出あるくものたち』:83『喜びの箱』:83
 『ニワトリ号一番のり』は全然児童文学じゃないと思うんだけど…でも海洋ものの好きな人にはおもしろい話だと思う。何となく少年水夫の話かと思っていた。しかし全体の3分の2くらいまで漂流していて「ニワトリ号」が出て来ないとは思わなかったなあ。『夜中出あるくものたち』『喜びの箱』は続きものとは思えないくらい時代の感じが違う話だが、微妙な雰囲気のあるイギリスのファンタジーとしておもしろい。夢オチにしてあるところはちょっといただけないけど。
メイン,ウィリアム
『砂』:83『地に消える少年鼓手』:84『闇の戦い』:80
 『砂』はなんかぱっとしない感じがあまりによく書けているせいか、あんまりおもしろくなかったなあ。同時期に読んだタウンゼンドの『アーノルドのはげしい夏』の方がおもしろかったぞ。『闇の戦い』は形式としてはファンタジーだが、本質はリアリズムの物語。「竜」がきたならしい感じで竜好きには嫌がられるかも(原語は"worm"だからしかたがないけど)。『地に消える少年鼓手』の方が素直な話だったような(でもよく覚えてない…)。
メーテルリンク(マーテルランク),モーリス
『青い鳥』
 結局青い鳥は家にいた、なんてそれまでの苦労がむなしいような気がしてしまった。そりゃ過程が大事とかはわかるけどさー。
メリング,O.R.
『妖精王の月』:99『歌う石』:99『ドルイドの歌』:99
 それなりにおもしろいのだけれど、どれも今一歩という感じがする。
モオ,ヨルゲン
『太陽の東 月の西』:84
 北欧の話はイメージが美しくて好き。(直接関係ないが、最近福音館の民話絵本は再話者名を入れるようになったようで、『三びきのやぎのがらがらどん』はアスビョルンセンとモオの名が出ている。)
モルナール,フェレンツ
『パール街の少年たち』(偕成社文庫):86
 少年小説の名作だけど、最後がやっぱり悲しい。
モンゴメリ,ルーシー・モード
『赤毛のアン』:82以前『アンの青春』:99『アンの愛情』:99『アンの友達』:99『アンの幸福』:99『アンの夢の家』:99『炉辺荘のアン』:99『アンをめぐる人々』:99『虹の谷のアン』:99『アンの娘リラ』:99『銀の森のパット』:82以前『パットお嬢さん』:82以前
 <赤毛のアン シリーズ>は1作目を随分前に「教養」として読んだが、それほど強い印象はなかったような気がする。少し前にテレビで映画を見ておもしろかったので再読したら実におもしろく、続編を全部読んでしまった。滑稽な失敗を次々にしてしまう1作目が何と言っても一番だが、大きくなってからの話もおもしろかった。実はマシュウが結構気に入ったので、1巻目にしか出て来なくて残念。アンの子どもたち世代の話になる『炉辺荘のアン』『虹の谷のアン』『アンの娘リラ』は主人公がアンに比べると「平凡」な子たちなので、今一つに感じられてしまう。かえってほとんどアンが出てこない番外編的な短編集『アンの友達』『アンをめぐる人々』の方が楽しめたような…。『銀の森のパット』は『シラカバ屋敷の少女』とどちらの方で読んだか忘れた。赤いドレスか夜のような青のドレスかで悩むところとか、猩紅熱か何かで抜けてしまった後の髪の毛が濃い色になって喜ぶところとかを覚えている。自分の投影か、モンゴメリの物語には意地っ張りで晩婚の女性がしばしば出てくるような気がする。

ヤ行

ヤンソン,トーベ
『ムーミン谷の彗星』:82『たのしいムーミン一家』:80以前『ムーミンパパの思い出』:80以前
 シリーズの途中で読まなくなってしまったので、どこまで読んだかわからない。(私が読んだシリーズでは)2作目の『ムーミンパパの思い出』までは確実に読んだと思うのだが…。アニメのかわいい感じが定着しているけれど、結構ペシミスティックな話だったりするせいか、あまり思い入れはない。ムーミンをカバだと、スナフキンを人間だと思っている人もいるらしい。昔家に漫画本があったけど、あれは日本のオリジナルじゃなくて翻訳だったかなあ。
ヨング,ドラ・ド
『あらしの前』:99『あらしのあと』:99
 気になっていたが子どものころには読みそこねていた話。戦争の真っ只中の部分がなくそういう意味では「地味」な話だが、その前後、特に戦後の子どもたちの心理状態がリアル。ヨーロッパのすぐれた戦争児童文学だと思う。
ヨンソン,ルーネル
『ビッケと赤目のバイキング』:78『ビッケと弓矢の贈りもの』:78『ビッケと木馬の大戦車』:78『ビッケと空とぶバイキング船』:78
 学研の第1作は確か読んでいなかったはず…。アニメの主題歌がPPMの「パフ」の替え歌だったような気がしているのだが、ただの勘違いかな?

ラ行

ライヴリィ,ペネロピ
『トーマス・ケンプの幽霊』:84
 全然怖くない、困った奴である幽霊もの。イギリスの味のある古い屋敷ものの一種。
ライトソン,パトリシア
『星に叫ぶ岩ナルガン』:84『氷の覇者』:84『水の誘い』:84『風の勇士』:84『ぼくはレース場の持主だ!』:86『ミセス・タッカーと小人ニムビン』:86
 オーストラリアではオーストラリアの妖精の話を語るのは正しいと思うけれど、やっぱり「白人」が原住民の立場で語る<ウィラン・サーガ>はやや無理があるような感じが少しする。かえって白人が主人公の『星に叫ぶ岩ナルガン』や『ミセス・タッカーと小人ニムビン』の方が自然で私はおもしろかった。特にミセス・タッカーは元気で楽しい。リアリズムの『ぼくはレース場の持主だ!』もよくできたいい話。
ラング,アンドルー
<ラング世界童話全集>(ポプラ社)
 小学生のとき姉が中学の図書室から借りてきたのをいくつか読み、特に『ぎんいろの童話集』がイメージがとても美しくて気に入った。自分が中学生になったときに残りを読み始めたが、もう物足りない感じになってしまっていて残念だった。シリーズ全部は読まなかったと思う。偕成社文庫になったのは別編成のシリーズの方で、『ぎんいろの童話集』が入っていなかったのでがっかりした。訳者は同じなのになぜ2種類あるのだろう?
ラングル,マドレイン(レングル,マデレイン)
『惑星カマゾツ』:86
 『五次元世界の冒険』というタイトルの方がかっこ良かったなあ。児童文学には珍しいSFもの。ところでこの人の名前は「ラングル」と「レングル」とではどちらが良いのだろうか? フランス系なのかな?
ランサム,アーサー
『ツバメ号とアマゾン号』:79以前『ツバメの谷』:79以前『ヤマネコ号の冒険』:79以前『長い冬休み』:79以前『オオバンクラブの無法者』:79以前『ツバメ号の伝書バト』:79以前『海へ出るつもりじゃなかった』:79以前『ひみつの海』:79以前『六人の探偵たち』:79以前『女海賊の島』:79以前『スカラブ号の夏休み』:79以前『シロクマ号となぞの鳥』:79以前『空とぶ船と世界一のばか』:79以前『アーサー・ランサム自伝』:85
 一つの確たるテーマがあるわけではないものが多く、粗筋や魅力を大変説明しにくいのだが、とにかくおもしろくて好きな作品。個々のエピソードや細部が目に見えるように細かく書き込まれていて、「日常の中の冒険」が存分に楽しめる。「リアリズム」の児童文学では私の中でベストに近い作品。キャラクターもそれぞれに個性的で、視点を一つにしていなくても散漫にならない技は見事。「休暇物語」として「リアリズム」の作品の中では古さを感じさせない。ヨットに憧れた。『ツバメ号とアマゾン号』『ツバメの谷』『ヤマネコ号の冒険』『ひみつの海』『海へ出るつもりじゃなかった』のあたりが特に好き。『女海賊の島』はちょっと…。自伝や伝記(『アーサー・ランサムの生涯』(ヒュー・ブローガン著 神宮輝夫訳 筑摩書房 1994))で、作家になるまでにいろいろあった人だと知ってびっくり。ロシア革命にあれほど深くかかわっていたとは知らなかった。でもかなり偏屈な人だったらしい…。
リオーダン(ライオダン),リック
『盗まれた雷撃』:12『魔海の冒険』:12『タイタンの呪い』:12『迷宮の戦い』:12『最後の神』:12『ハデスの剣』:12
 ギリシャ神話とアクションを融合した冒険ファンタジー<パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々>シリーズ。現代のアメリカとギリシャ神話というミスマッチなコラボが楽しい。ギリシャ神話の神は西洋文明の繁栄しているところにいる、という設定なので舞台はアメリカ。現代風だけどどこかそれらしい神様たちや定番の存在もいろいろ。軽いノリで話はさくさく進むけど、放っとくと世界が存亡の危機にさらされるので、神と人間の間に生まれた主人公たちは「英雄」として頑張らなければいけなくなる。大変だ。でもパーシーくんはちゃんと「英雄」っぽいよ! 映画は今ひとつだったなあ。
リダ
『のうさぎのフルー』:76以前『かわせみのマルタン』:76以前
 確か左開きで文が横組の、横長の絵本の形のもので最初に読んだと思う。他にクマの話とか、同じシリーズであと2冊ぐらい出ていたはず。『かわせみのマルタン』は最後のところが少し悲しかったので、『のうさぎのフルー』の方がたくましく生きていて好きだった。食べ物がおいしそうだったし。冬、畑に放っておかれたキャベツが赤くなることをこれで知った。
リヒター,ハンス・ペーター
『あのころはフリードリヒがいた』:81以前『ぼくたちもそこにいた』:95『若い兵士のとき』:99
 『あのころはフリードリヒがいた』は、少しずつ逆転していく主人公とフリードリヒの立場、自分も破壊行動に加わってしまうところ、ラストのシーンなどが、感情表現を抑えた客観的で淡々とした語り口によってかえって鮮烈な印象を残す。このての話の中で例外的に「好き」と言ってもいい、非常によくできていると思う作品。『ぼくたちもそこにいた』は少しインパクトが弱い気がしたが、記録の断片のような『若い兵士のとき』には軍隊というものの不条理な面がよく表れていたと思う。
リーフ,マンロー
『おっとあぶない』:76以前『はなのすきなうし』:76以前『みんなの世界』
 『おっとあぶない』は「しつけ」の本なのだろうが、あそこまではっきり書いてあるとかえって嫌味がなくわかりやすい。絵も生々しくないのがいいかも。『みんなの世界』もその系列の本だがちゃんと読んでないような気がする。『はなのすきなうし』はよく考えると変な話だったなあ。いい話だけど。
リュートゲン,クルト
『オオカミに冬なし』:99
 寒く厳しいノンフィクション・ノベル。探険・冒険物語が好きだった小学生の頃に読めばもっとおもしろかったかな。タイトルがかっこ良くて何となくずっと気になっていた。迫力があって読みでがある。
リリウス,イルメリン・サンドマン
『新しい地を求めて』:90『トッレ南へ』:90『白鳥』:90
 不思議な雰囲気のある話だが、登場人物に思い入れしにくく、印象がまとまらない感じの話だった。
リンクレイター(リンクレーター),エリック
『緑の海の海賊たち』:99
 ナンセンス・ファンタジーの系列の話だが、海洋冒険物語としてもおもしろい。イギリス海軍好きにはいろいろにやりとするところがたくさんある、とっても楽しいお話。絶版らしいのが残念。
リンドグレーン,アストリッド
『長くつ下のピッピ』:76以前『ピッピ船にのる』:76以前『ピッピ南の島へ』:76以前『やかまし村の子どもたち』:76以前『やかまし村の春・夏・秋・冬』:76以前『やかまし村はいつもにぎやか』:76以前『名探偵カッレくん』:76以前『カッレくんの冒険』:76以前『名探偵カッレとスパイ団』:76以前『さすらいの孤児ラスムス』:76以前『ミオよ わたしのミオ』:83『わたしたちの島で』:00『ちいさいロッタちゃん』:15『ロッタちゃんのひっこし』:15
 <ピッピ><やかまし村><カッレくん>はみな毛色が違うが、どれもそれぞれとてもおもしろかった。『ミオよ わたしのミオ』などのファンタジーもあるけれど、この人はどちらかというとリアリズムの作家だと思う。『わたしたちの島で』はちょっと頼りない(?)父をめぐる子どもたちがいい子だなあ。さまざまなタイプの作品が書ける非常にうまい作家だが、それぞれの作品が独立していて連続性がないためか、作品集を全部は読んでいない。
 「ロッタちゃん」シリーズは幼児の世界を描いた物語。ロッタちゃんが中心の話だが、1作目は姉のマリヤ視点の連作。2作目は1作目より少し大きくなったロッタ視点。家出してやる!と息巻いて「ひっこし」を決行する顛末を描く。日本ではこちらの方が訳が先に出ている。幼児の強情っぱりに共感できたりかわいく思えたりすればしめたもの。幼児のわがままにいらいらしちゃ駄目なんだよね…ラモーナもだけど、リンドグレーンは等身大の幼児の姿もうまいよなあ。「ひっこし」をしようとするロッタのことを、ただ叱ったり止めたりするのではなく、そのままやらせて、本人が「帰る」と言いだしても「それみたことか」みたいなことを言わずに受けとめてくれる周りの大人たちの反応がとてもいい。途中で少し気がそれることもあるけど、ちゃんと新居を掃除しようとするロッタにちょっと感心。きちんと育てられてるんだね。
ルイス,セシル・デイ
『オタバリの少年探偵たち』:86
 少年探偵ものの名作の一つ。ミステリー作家のニコラス・ブレイクだということは知っていたけれど、メイスフィールドの次の桂冠詩人でもあったんだなあ。
ルイス(リュイス),ヒルダ
『とぶ船』:83
 数あるイギリスのファンタジーの中ではあまり目立たない(?)感じの話だが、物語はよくできていておもしろく好きな作品。現代の別の場所にも行くが、タイム・ファンタジーとも言える。
ルイス,C.S.
『ライオンと魔女』:76以前『カスピアン王子のつのぶえ』:76以前『朝びらき丸 東の海へ』:76以前『銀のいす』:76以前『馬と少年』:76以前『魔術師のおい』:76以前『さいごの戦い』:76以前『沈黙の惑星を離れて』:81『金星への旅』:81『かの忌わしき砦』:81『別世界にて』:83『喜びのおとずれ』:95
 小学生の頃に読み、純粋にファンタジーの物語として楽しんだ。私の中でのファンタジー作品のベスト3に入る非常に気に入った作品。地域文庫や図書館でシャープの<ミス・ビアンカ>とともに何度も何度も借りたもの。キリスト教についての半可通な知識を持つ前に読んで良かったと思う。『ライオンと魔女』ではズルしてるみたいな気がしたけど何だかうまくいったみたいだし、『さいごの戦い』のラストはよくわからない感じもしたけれどみんな幸せみたいだから、ま、いいか。最初に読んだ、みずみずしい感じの『魔術師のおい』と、順に読めず(『銀のいす』を先に読んでしまった)待たされた上に、当時好みだった探険・冒険記のスタイルの『朝びらき丸 東の海へ』が特に好き。だんだん『銀のいす』や『馬と少年』の渋さも捨てがたい気になってきたけど。<神学的SF>三部作はおもしろいところもあるが…。エッセイや自伝はまあ知識として。後半生の伝記映画『永遠の愛に生きて』はファンには興味深いけど、映画としては残念ながら二流かな。
ル=グウィン,アーシュラ・K.
『影との戦い』:80以前『こわれた腕環』:80以前『さいはての島へ』:80以前『帰還』:93『アースシーの風』:05『ゲド戦記外伝』:05『ギフト』:10『ヴォイス』:10『パワー』:10『空飛び猫』:93『帰ってきた空飛び猫』:95『素晴らしいアレキサンダーと、空飛び猫たち』:99『空を駆けるジェーン』:02『闇の左手』:80『所有せざる人々』:81『ロカノンの世界』:81『辺境の惑星』:81『幻影の都市』:81「世界の合言葉は森」:81『天のろくろ』:81「アオサギの眼」:81『風の十二方位』:80『コンパス・ローズ』:84『内海の漁師』:97『始まりの場所』:85『オルシニア国物語』:84『ふたり物語』:83『夜の言葉』:85
 <ゲド戦記>(3作目まで)は、C.S.ルイスの<ナルニア国ものがたり>、トールキンの<指輪物語>と並ぶ私の中の「三大ファンタジー」の一つ。「名前の掟」が新鮮だった。『影との戦い』では「影と一体になって完全となる」ということの意味が最初に読んだ頃はあまりよくわからなかったが、ファンタジーとしてすごく読み応えがあるおもしろい作品だった。
 『帰還』は、作者があれを書いたわけも、あのように書いたわけも、あれだけ時間が経たなければ書けなかったわけも、とてもよくわかるような気がするけれど、物語としては心から好きになれない。私にとってはすでに完結してしまった<三部作>と第4作は別ものになってしまっている。全部一気に続けて読めばまた違ったかもしれないが…。書かれてしまって「残念」な続編だった。竜と人間の関係など、まだまだファンタジーとしておもしろい新しい展開も含まれているのになあ。
 …と思っていたら、やはり続編が出た。『アースシーの風』では総集編的に竜と人間の関係やテハヌーやレバンネンについても収まるべきところに収まった感じになっていて、この巻なら「最後の書」でも良いかもしれない。ただし作者がその気になったらまだ書くかもしれないが。『ゲド戦記外伝』はいろいろな時代の物語があって興味深い。『帰還』と『アースシーの風』をつなぐ「トンボ」では『帰還』で『さいはての島へ』と矛盾していると思ったことも解消されたが、『帰還』ではあえて書かなかったと思われたことがあっさり書かれていてちょっと拍子抜け。しかしこの物語は『帰還』と『アースシーの風』をつなぐ重要な話で第5作『アースシーの風』の前に読むべきものなので、できれば『アースシーの風』の冒頭に入れておいて欲しかった。あとになって読む人にとっても良いし、日本では『ゲド戦記外伝』の出版が後になったのでなおさら。それと「トンボ」の題は、別アンソロジーでは原題をカタカナにした「ドラゴンフライ」でこの方がわかりやすいと思ったが、これが「トンボ」のことであるという二重の意味が日本語だと伝わらないので難しいところだと思った(…と書いていたら岩波少年文庫版では『ゲド戦記外伝』は『ドラゴンフライ』と改題して第5巻になり(中の物語の題も改題)、『アースシーの風』も第6巻に変更になった)。『帰還』ではもう駄目だと思ったけど、さすがこの作者、『アースシーの風』『ゲド戦記外伝』はファンタジーとしてもよくできていておもしろかった。『帰還』であんなに「無理」しないで、最初からこういう設定で書いていれば…と思うのはないものねだりか。
 <西のはての年代記>は、新しい世界「西のはて」を舞台としたファンタジーのシリーズで、それぞれ「自分探し」をする若者の物語でありがちな展開かもしれないが、相変わらずうまく、安心して読める。
 『空飛び猫』のシリーズは絵がとってもかわいい。SFはやはり『闇の左手』がもっともよくできていておもしろいと思うが、初期の『ロカノンの世界』などの3作も、完成度は落ちるがイメージがきれいだしみずみずしくて結構好き。この人の作品はだんだんかさかさ乾いた感じになっていたような気がする…。『ふたり物語』は知る人ぞ知るル=グウィンの青春物語で、『どこからも彼方にある国』として新訳・再刊されている。
 エッセイ集『夜の言葉』も興味深いが、初版(日本ではサンリオSF文庫版)と改訂版(日本では岩波書店同時代ライブラリー版)では、作者の考えの変化を反映してかなり変えられている文章もある。
ルナール,ジュール
『にんじん』
 ちゃんとは読んでないかもしれない。しかしこの母親は、悪いことを子どもがやったように自分で仕組んでおいて叱るとか、実に何とも言えない程ひどい人間だ。主人公がその割にのほほんとしているのが救いだけど。
レイナー,ウィリアム
『スタッグ・ボーイ』:83
 スーザン・クーパーやアラン・ガーナーなどにも出て来た「狩人ハーン」というイギリスの古い伝説の精のことがもっと知りたい。ケルト神話のものか?
ローズ,アン
『エルクの日記』:85
 自分の国土が戦火にさらされていないアメリカの気楽さを主人公とともにもどかしく感じてしまった。作者は自分の幸運さをずいぶん引け目に思っていたのではないだろうか。
ロッダ,エミリー
『ローワンと魔法の地図』:06『ローワンと黄金の谷の謎』:06『ローワンと伝説の水晶』:06『ローワンとゼバックの黒い影』:06『ローワンと白い魔物』:06
 おとなしく目立たない、どちらかと言えば臆病で全然「英雄」的でない少年が、自分たちの世界の危機に立ち向かうことになり、冒険の中で成長していくという物語。正統派のよくあるタイプの別世界ファンタジーで1作ずつがそれほど長くない「中学年向け」の読み物だが、手馴れた感じの描写で読みやすくおもしろい。シリーズそれぞれで舞台を変えているが、脇役のキャラクターや背景の世界もしっかりしていて、もっといろいろ知りたくなる。
ロバーツ,キャサリン
『ライアルと5つの魔法の歌』:06
 「癒し」「笑い」「嘆き」「恐怖」「死」といった心を操る歌が一種の「魔法」として存在し、人魚や鳥人のような「半人」が生きている別世界を舞台とするファンタジー。その「半人」と話すことができ、「歌使い」を目指す少女ライアルと少年ケロンがこの世界で企まれている陰謀に立ち向かうことになるのだが、ケロンが当初「嫌な奴」として描かれていてあまり好きでなかったので、後半の「いい子」になっていくところがちょっとうまくいき過ぎなような。「二人主人公」でそれもどちらかと言うとライアルよりケロンの方が印象が強いので、邦題はあまり良くない気がする。描写にややグロテスクでリアルなところがあったりするが、「魔法」が「心を操る歌」というのはおもしろい。
ロビンソン,ジョーン・G.
『思い出のマーニー』:82『くまのテディ・ロビンソン』:99『テディ・ロビンソンまほうをつかう』:99
 『くまのテディ・ロビンソン』『テディ・ロビンソンまほうをつかう』は、あくまでも「ぬいぐるみ」のクマとして描かれているのが良い。『思い出のマーニー』は、物語はうまく収まっているとは思うのだが、マーニーとのことがあいまいになってしまってちょっとすっきりしない気がした。タイム・ファンタジーの一種だが…。
ロフティング,ヒュー
『ドリトル先生アフリカゆき』:76以前『ドリトル先生航海記』:76以前『ドリトル先生の郵便局』:76以前『ドリトル先生のサーカス』:76以前『ドリトル先生の動物園』:76以前『ドリトル先生のキャラバン』:76以前『ドリトル先生と月からの使い』:76以前『ドリトル先生月へゆく』:76以前『ドリトル先生月から帰る』:76以前『ドリトル先生と秘密の湖』:76以前『ドリトル先生と緑のカナリア』:76以前『ドリトル先生の楽しい家』:76以前『もりのおばあさん』:76以前
 探険・冒険ものが好きだったので『ドリトル先生航海記』が気に入っていたが、さまざまな工夫をする『ドリトル先生と秘密の湖』、飼い主を探し求める『ドリトル先生と緑のカナリア』も結構好きだった。今読むと差別的なところがあるとかペシミスティックなところがあるとかいろいろ言われることもあるけれど、純粋におもしろい物語として楽しめばいいと思うんだがなあ。井伏鱒二の名調子「これはしたり」「すこぶる~」などの独特な言い回しや、作者自身のほのぼのとした挿絵もいい。ドリトル先生が細身になっているアニメがあったがあれはちょっとな…。『もりのおばあさん』がロフティングの作品とは気がついていなかった。でもそう言えばそれらしい。
ローベ,ミラ
『リンゴの木の上のおばあさん』:99
 「教育的」な人は後半で隣のおばあさんが出て来て安心するのだろうが、個人的には前半の「空想」のおばあさんとの自由奔放な冒険のところが楽しくて好きだった。物質的には不自由はないのだけれど「おばあさん」が欲しいという子どもの気持ちを作者はよくわかっていると思う(物語の中のお母さんにはわかってない…わかっていてどうしようもないのかもしれないけれど)。隣のおばあさんがもう一人のおばあさんをないがしろにせず、おばあさんが二人も「いる」ことになるラストは秀逸(イラストも良い)。
ローランド,ベティ
『鉄橋をわたってはいけない』:83
 タイトルが印象的な作品。「~してはいけない」ということは必ずしてしまって、まずいことになるんだよな…。
ローリー(ロウリー),ロイス
『ザ・ギバー』:99
 一見ユートピアという近未来SF。SFでは一昔前によくあったタイプの話のような気がするが、児童文学としては珍しいかも。こういう話を読むと、完全管理社会の方が楽、と内心感じている人は結構多いだろうなと思ってしまったりする。オープン・エンディングになっているけど結末がちゃんと知りたいなあ。
ローリング,J.K.
『ハリー・ポッターと賢者の石』:06『ハリー・ポッターと秘密の部屋』:07『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』:07『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』上・下:07『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』上・下:09『ハリー・ポッターと謎のプリンス』上・下:10『ハリー・ポッターと死の秘宝』上・下:11
 「ハリー・ポッター」シリーズは普通におもしろい話ではあるけれど、そんな全世界のベストセラーになるほどものすごい作品でもなかったような気がする。個人的には主人公のハリーくんに思い入れしにくいのが痛かったかな。主人公が「本当は力はあるけど最初は何も知らない普通の子ども」というのはこういう話にはよくある設定で、何も知らない主人公とともに読者も少しずつ知っていき、主人公も成長するものなのだけど、ハリーくんにはあまり「成長」が見られない。やるときには何となくできちゃう感じで、きちんと能力を把握したからというわけでもなさそうで。一方、あまりにも「普通」の少年で人の話を聞かなかったり自分の考えに固執したりして、読んでいてややいらいらさせられる。物語の主人公には読者に近い親しみやすさも必要だけど、そのちょっと上をいくヒーロー感も欲しいもの。そういう普通の少年がよく書けていると言えるのかもしれないけれど。最後はきれいにうまくまとまったとは思うが、最終巻の終わり方は結構あっさりしていたような。
 最初のおば夫妻の家での部分などは悲惨ながら妙にコミカルで現実味が薄く、「そうか、これって〈おとぎ話〉だったのか」という感じがした。巻が進むにつれ、クィディッチの試合の比重が下がっていくのが少し寂しい。もうそれどころではなくなっているのはわかるけれど。
 キャラクターはいい味出している人も多いのだが、あれだけの巻数があった割にはもっと描いて欲しかった人物もかなりいるような。書かれなかった設定や後日談もあるようなので、こぼれ話を外伝集として出してくれないかな。ヴォルデモートはああいう悪役には珍しく、容姿に気を遣わない人だったなあ(しかし翻訳の「俺様」はちょっといただけない)。ドラコ・マルフォイは役者さんもイケメンに育ったのに美形の無駄遣い~。スネイプ先生は嫌味たっぷりで楽しかった。ああいう人なんだろうとは思ったけど、回想シーンがヤバい。真面目で厳しいマクゴナガル先生も実はお茶目なところがあってすごく好きなんだけど、若い頃とか見たかったなあ。何でもいたずらにしてしまうフレッドとジョージの双子が最初は苦手だったが、途中からこの二人がすごい和みポイントなのに気づいた。はじめはただ鈍な感じだったネビルくんが最終巻はとっても格好いいぞ!
 映画のイメージに引きずられがちになるが、ビジュアル的には悪くはないと思う(ただしテレビ版の吹替は何とかならんものか。ハーマイオニーをはじめ、子どもたちがひどい棒読み。大人はいいのだが)。
ローリングズ,マージョリ・キナン
『子鹿物語』
 名作なんだろうけど、こういう作品は楽しくない…。ちゃんと読んではいないと思う。
ローレンス,アン
『五月の鷹』:93
 アーサー王伝説の中の一つのエピソードをふくらませた物語だが、今一つ印象がまとまらない話だったような…。

ワ行

ワイルダー,ローラ・インガルス
『大きな森の小さな家』:80以前 『大草原の小さな家』:80以前『プラム・クリークの土手で』:80以前『シルバー・レイクの岸辺で』:80以前『農場の少年』:80以前『長い冬』:80以前『大草原の小さな町』:80以前『この楽しき日々』:80以前『はじめの四年間』:80以前『わが家への道』:83
 食べ物がとてもおいしそうで、読むといつもおなかがすいて困った。その食べ物を含め、実際はすごく質素で貧しく苦しいときもたくさんあったのだろうけれど、物語は元気で明るく貧乏臭いところがないのが良い。前半と後半で訳者が異なり、雰囲気がかなり違うのが残念(講談社のはなぜ『長い冬』が抜けているのだろうか?)。ローラの原稿にすでに作家として成功していた娘のローズがかなり手を入れて実態は合作のようなところがあったらしいが、後世に名が残るのはローラだけなんだろうな…。テレビで有名なったけど、テレビ・シリーズの「とうさん」はあごひげがないのがちょっといただけない。
ワイルド,オスカー
『しあわせの王子』『ドリアン・グレイの肖像』:82以前
 『しあわせの王子』、こういう感動ものの悲しいお話は嫌いなんだけど…。『ドリアン・グレイの肖像』は退廃的なお話で、美しいというより暗かったような印象がある。いつぞやの日本イギリス児童文学会での、ワイルドの作品すべてから無理矢理(?)「男色趣味」を読み取ろうとする研究発表はおもしろかったなあ。

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