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私的 児童文学作家事典〔海外編〕ナ行

2018年7月15日 鈴木朝子

ニクソン,ジョーン・ラウリー Nixon, Joan Lowery(1927~2003)
 アメリカの児童文学作家。ロサンゼルス生まれ。南カリフォルニア大学、カリフォルニア州立大学を卒業。小学校の教師となり、1949年に結婚、4人の子の母親となる。1964年の処女作以来、子ども向けのミステリー作品を数多く執筆し、狂言誘拐の嫌疑を一人で晴らし自立への道を踏み出す少女の物語『クリスティーナの誘拐』(1979)とその後の2作品で、3回エドガー・アラン・ポー賞を受賞。高校や大学で創作講座の講師も務める。幼年向けの作品やノンフィクションの著作もある。

ネストリンガー,クリスティーネ Nöstlinger, Christine(1936~2018)
 オーストリアの作家。ウィーン生まれ。ウィーンの工芸大学でグラフィック・デザインを学び、卒業後新聞や雑誌に寄稿したりラジオやテレビの脚本を執筆し、1970年から子どもやティーンエイジャー向けの作品を発表し始める。ユーモラスでときにファンタジーの手法を用いながら、現代の子どもや社会の問題を描き出し、保守的な態度を鋭く風刺している。おかしなものの出現を通して家族の問題を扱った『きゅうりの王さま やっつけろ』(1972)は、ドイツ児童図書賞を受賞し、映画化もされた。他に、第二次大戦時の生活を描いた自伝的な『あの年の春は早くきた』(1973)、オーストリア児童文学賞を受賞した『みんなの幽霊ローザ』(1979)、<金ぱつフランツ シリーズ>など、絵本や幼年向けのものから大人向けのものまで、多くの作品がある。1984年国際アンデルセン大賞を受賞。
ネズビットネスビット),イーディス(イディス) Nesbit, Edith(1858~1924)
 イギリスの作家。ロンドン生まれ。父親は幼児のときに亡くなり、姉の転地療養のためヨーロッパ各地を転々として、辛い学校生活を過ごす。1880年に結婚、生活のために雑誌に小説や詩を執筆。一方夫とともにフェビアン協会の創立に参加し、労働者階級の人々の福祉活動など多くの活動を行う。雑誌に学校生活の回想記を書いたのを機に、子ども向けの物語の執筆を始め、元気な子どもたちのユーモアあふれる作品を発表。一文無しになった家のために6人姉弟がお金を作ろうと奮闘する『宝さがしの子どもたち』(1899)に始まるバスタブル家の三部作のようなリアリズム作品と、妖精に願いをかなえてもらうことで引き起こされる騒動を描く『砂の妖精』(1902)に始まる三部作のようなエヴリデイ・マジックのファンタジーの両方に優れる。他の作品に、リアリズムでは『若草の祈り』(1906)、ファンタジーでは『緑の国のわらい鳥』『魔法の城』(1907)などがある。

ノイマン,ルードルフ Neumann, Rudolf(1926~  )
 ドイツの児童文学作家。ベルリン生まれ。子ども向けの物語のほか、ラジオ・ドラマの脚本も執筆。手品師の帽子(とその「中身」)をめぐる物語『魔法のぼうしはどこ?』(1959)は、語り手が変わる形で次々に起こっていく出来事をテンポ良く愉快に描いている。他の作品に、『「もし」ということばがもしなかったら!』(1963)、『おこったクマ』(1964)などがある。
ノース,スターリング North, Sterling(1906~1974)
 アメリカの作家。ウィスコンシン州の農場で生まれる。シカゴ大学を卒業。「シカゴ・デイリー・ニューズ」「ニューヨーク・ポスト」紙の文芸欄編集委員、出版社ホートン・ミフリン社の主幹などを務める。1935年から子ども向けの読み物を書き始め、伝記やノンフィクションのほか、動物物語に優れる。少年時代の回想記であるアライグマとのほのぼのとした交流を描いた『はるかなるわがラスカル』(1963)は、ダットン動物文学賞などを受賞し、アニメ化もされて広く親しまれている。
ノーソフ,ニコライ・ニコラエヴィチ Носов, Николай Николаевич(1908~1976)
 ソビエト時代のロシアの児童文学作家。ウクライナのキエフ生まれ。中学校を卒業後しばらく煉瓦工場で働き、のちキエフ芸術大学に入学。モスクワ映画大学に移って、1932年の卒業後から1951年までソフキノ映画製作所で教育・科学映画やアニメーションなどの監督を務める。1938年から子ども向けに作品を発表し始め、好奇心の強い子どもたちが自分の目で見、行動する様子をユーモラスに生き生きと描く。勉強嫌いを克服し友情を深める少年たちの生活を描いた『ヴィーチャと学校友だち』(1951)は、やや教訓的ながら当時のソビエトの教育の理想を表現し、スターリン賞を受賞。他の作品に、小人たちの楽しい冒険ファンタジー『ネズナイカのぼうけん』(1954)などがある。
ノートン,メアリー Norton, Mary(1903~1992)
 イギリスの児童文学作家。ロンドン生まれ。女子修道院の学校で教育を受ける。舞台女優を務めたのち、1927年に結婚してポルトガルに住む。夫の事業不振などでアメリカに渡り、ニューヨークでイギリス政府関係の仕事に携わる。1943年イギリスに戻り、演劇活動のかたわら子どもの本やラジオの脚本などを執筆。通信教育を受けている見習い魔女の引き起こす楽しい冒険を描く『魔法のベッド南の島へ』(1945)とその続編で人気を得、映画化もされた。カーネギー賞を受賞した『床下の小人たち』(1952)に始まる<小人の冒険シリーズ>は、人間から物を「借りて」暮らす小人たちが安住の地を求める物語だが、リアルな細かい描写に優れ、現実の人間の生活を考えさせるものとなっている。

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